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悠太と喧嘩をした。
今日起こったことなのに、原因はなんだったか覚えていない。でも、喧嘩の発端は俺だった気がする。いつも優しくて、多少のことでは怒ったりしない悠太が怒ったんだ。俺は余程のことをしたんじゃないかな。
たしか、最後の方は俺が一方的に酷いことを言って家を出てきたんだ。悠太、傷付いただろうな。もう俺のことなんか、嫌いになったかも…。
早く謝りに行かなくちゃって思うのに、身体は動かない。まだ意地を張ってる自分がいるんだ。もう空も真っ暗になって、より一層寒くなった。コートも何も持たずに出てきちゃったから、かなり寒い。正月のときみたいに要の家に行ったけど、留守だった。春の家は姉弟が多くて迷惑になるだろうし、千鶴の家は知らないし。行く宛のない俺は少し離れた公園のブランコに座ってる。ここに来て、何時間経ったんだろう?いつになったら帰ろうか。時計の針は、もう夜中の一時を指している。さて、どうしたものかと悩んでいると、後ろから足音が聞こえてきた。
こんな夜中に誰?と思って後ろを振り向いたときには、俺はその人物に抱き締められていた。

「こんな時間まで何してんの!すっごく捜したんだから!」

いつもは出さないような大きな声で悠太は言った。ぎゅうっと抱き締めてくる悠太の手を握ると、とっても冷たかった。一体、いつから捜してくれてたの?俺の心に、じわじわと罪悪感が湧いてきた。悠太は俺を嫌いになってなんかなかったし、もう怒ってもいない。なのに、俺はいつまで意地張ってんだろ…。

「…悠太、ごめんね」
「ううん、俺こそごめんね」
「帰ろ、っか」
「うん。…あ、はい。これ」

悠太が俺のコートやマフラーを差し出してくれる。ホントに、俺は手のかかる子供みたいだ。
心のどこかで俺は、悠太が迎えに来てくれるのを待ってたんだと思う。何にもできない…いや、何にもやらない俺の面倒を見続けてくれる悠太。同い年なのに、手のかかる弟でごめんね。でも、たぶんこれからも悠太の優しさに甘えちゃうと思うんだ。だから、俺は俺にできることをする。面倒くさがりの俺だけど、悠太を愛することだけはできるから。だって俺、どうしようもないくらい悠太が好きで、絶対に必要な存在だってこと、改めて実感したもん。

俺が「大好き」と言えば、君は「ありがと」と言って嬉しそうに微笑む。この笑顔のためなら、俺は何度だって「大好き」を伝えたい。

- END - 





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