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※死ネタ/病





一度別れた高橋さんと再び付き合い始めて約2ヶ月。
俺も今度は高橋さんがちゃんと好きだし、高橋さんも変に気を遣わなくなった。そんな俺達を、千鶴達とは違ってあまり良く思ってないらしい人物が一人だけいた。その人物とは、今俺の隣で漫画を読んでいる双子の弟・祐希だ。
俺は気付いてないフリをしているけど、祐希の行動はあからさまだ。高橋さんと二人きりなんて許されないし、高橋さんを話題に出そうものならその瞬間に睨み付けられ、口を閉ざしざるをえない状態だ。俺も祐希のことは好きだけど、そんな束縛したいとか思ったことはない。いい加減祐希にも兄離れはしてもらわないと困るし…。
そんなことを考えてるそばから、祐希は横から抱きついてきた。

「ゆーたぁ」
「何?」
「悠太は、いつになったら高橋さんと別れるの?」

…まただ。祐希は、最近この質問ばかりしてくる。だから、俺もいつも通りに答えた。

「祐希、前から言ってるけど、人と付き合うのに期限なんか決めたりしないよ。別れるなんて、今から考えたりしてない。お互いが好きな限り付き合うつもりだからね」

いつもなら俺がこう言えば、不貞腐れたようにそっぽを向いて押し黙る。けれど、今日は違った。祐希は、次の質問をしてきたのだ。

「ねぇ、悠太と俺は、二人で一つだよね?だって、双子だもんね?」
「…たしかに、祐希と俺は双子だよ。でも、俺たちは違う人間でしょ?もう高校生なんだから、祐希も自立しなきゃダメだよ?」
「………」

祐希の顔は俯いてしまっているため見えない。祐希、と名前を呼べば、俺を抱きしめていた腕が、ぎゅうっとさらにきつく締まった。

「祐希、痛いよ」
「………」
「ね、祐希」
「…悠太は、俺のことが嫌いなの?俺は悠太が好きだよ。大好き」
「嫌いなわけないでしょ。俺も、祐希が好きだよ。だって、大切な弟だもん」

…俺の答えの、何がまずかったんだろうか。祐希は俺の答えを聞いた瞬間、胸ぐらに掴みかかってきた。

「…っ、何?」
「悠太、やっぱり悠太の好きは俺のとは違うんだね」
「え…?」
「だって、悠太は高橋さんが一番好きなんでしょ?俺のことは、弟として二番目に好きなんでしょ?」
「祐希…?何、言ってんの」
「俺は、悠太が一番好きだもん。兄弟だからとか、そういうのじゃなくて好きだもん」

最後の方は涙声になってしまった祐希の言葉。…あ、そういうことか。やっと、祐希の"好き"の意味が分かったよ。
でも、ごめんね、俺は…

「…俺は祐希のこと、そういうふうにはみれない。ごめんね」

俺がそれだけ告げると、祐希はゆっくりと立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
傷つけちゃった…よね?だけど、嘘の"好き"を言うより本当のことを言ったほうが祐希のためでもあると思うんだ。ごめん、ごめんね、祐希…。

「…ゆーた」

突然聞こえてきた声に後ろを振り向けば、いつの間にか戻ってきた祐希が立っていた。その目はどこか濁っているようで、いつもの祐希とは明らかに違う雰囲気で、思わず服の裾をぎゅっと握りしめる。

「ねぇ、悠太。俺、やっぱり悠太とずっと一緒がいいんだ」
「だから、それは…」
「うん、分かってるよ。悠太は俺に恋愛感情なんかないんだよね。高橋さんが好きなんだもんね」
「………」
「だからさ、二人で高橋さんがいないところに行こう?」
「!…祐希っ、やめ…っ!!」

祐希が何をしようとしているのか気付いたときには、もう遅かった。
彼は少し口角を上げ、後ろに隠し持っていた大きな包丁を、俺の胸に突き立てていた。

「っ…ゆ、き、」
「安心して。俺も、すぐ悠太のとこに逝くからね。…大好きだよ、悠太」

祐希は、真っ赤に染まった手を俺の頬に添えながら囁いた。
薄れゆく意識の中で見たのは、一筋の涙を流しながら微笑む祐希の顔だった…。





(どうしても気持ちが届かないのなら)(一緒に二人だけの世界へ逝こう)

- END - 





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