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「あ、こーちゃんがネクタイしてる!!」

朝学校に行く途中で会ったあきらは、俺を見るなりそう叫んだ。
あきらは始業式などの式典の日、つまり正制服を着なきゃいけない日には必ずこうやって騒ぐのだ。たかがネクタイをしているだけなのに…。

「あきら君、そりゃあ俺だって式典のときはネクタイくらいするよ」
「そうだね。式典を口実に、いつもは不良なこーちゃんが優等生気取れる日なんだもんね!」
「いや、俺不良じゃないし」
「えっ?ネクタイしないでシャツ出ししてて、髪の毛長めっていうのは不良という名の校則違反者なのに?」

あきらは、わざとらしく口に手を当ててそう言った。確かに、一般的にいえば校則違反者かもしれないけど、うちの高校はそういうとこが緩いからこういう格好をしてる人が多いのである。
だからといって、式典のときまで制服を着崩すことは認められていないし、俺だってそういう時はちゃんとした服装が正しいと思う。だから今日もちゃんとネクタイをしてきたのに、あきらは俺に言いたい放題言ってくる。

「それにこーちゃん、最近は授業中にメガネをかけて式典の日以外でも優等生をアピールしてるもんね」
「だから、あれは視力が下がったからだって!」
「まぁ、君が優等生気取ったところで誰も気にしないけどねっ」
「あのさ、優等生気取ってないからね?あきら君、人の話聞いてる?」
「あ、そういえば忘れてた!」
「ねぇ、全然聞いてな…うわっ!」


喋ってる途中で、あきらに思いっきりネクタイを引っ張られた。そして、次の瞬間にはあきらの唇が俺の唇に重ねられた。抵抗する間もなく、重なった唇は直ぐに離れる。

「…あ、あきら!何やってんの!?ここ、道端!道路!!」
「もう、うるさいなぁ。そんなこと言われなくても知ってるよ。朝のちゅうを忘れちゃったからしただけじゃん」
「だからって、場所を考えろよ!」
「何?嬉しくなかったの?」
「いや、それは嬉しかったけど…って、何言わせてんの!?」
「君が勝手に言ったんだよ」
「〜っ、もう知らない!」
「あ、こーちゃん!!ちょっと待ってよー!」

恥ずかしさから走り出した俺の後を、あきらが必死で追いかけてくる。
俺は、あきらから逃げながら、ネクタイも悪くないなと思った。

- END - 





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