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世間がクリスマスで賑わう中、俺は仕事をしていた。けれど、それも今片付いたところ。

現在 17:45

約束の時間である18:30には、急いでプレゼントを買って、走って行けばなんとか間に合いそうだ。
プレゼント、何にしようかな。そう思って立ち上がったときだった。学年主任に呼び止められた。…嫌な予感。




「最悪だ…」

誰にも気付かれないようにボソッと呟く。学年主任に呼び止められた俺は、案の定仕事をしなくてはいけなくなった。さらには、他の手伝いもさせられた。
自分でいうのもなんだけど、まだ若手だから仕方ないと言えば仕方ない。それに、妻子も恋人もいないって言ってあるし…。仕事をしながら電話かメールをしようとしたが、これまた最悪の事態。
電源切れてる…。昨夜たまたま充電を忘れたため、携帯はその機能を果たさなくなっていた。
あぁ、どうしようか。困ったな。メアドもケー番も覚えていない俺には、もう連絡手段は何もなかった。とにかく早く終わらせるしかない。そう思って一心不乱に仕事に取り掛かる。

そして、20:05。
漸く全ての用事が終わった。結局連絡は入れられず、約束の時間を大幅に過ぎてしまった。揚句の果てには雪まで降ってくる始末。今日は厄日か?さすがにもう待っていないだろうな、と思いつつも、足は自然と約束の場所へと向かっていた。もしかしたらいるかもしれない、という考えを捨てきれなかったのだ。
そうして20分程歩き、約束の場所である時計台が見えてきた。そこに人は、いない。やっぱ、いるわけないよな。
そう思って帰ろうとしたとき、ふと視界の端に何か動くものが映った。先程は気付かなかったが、どうやらしゃがみ込んでいるようだ。
もしかして…!慌ててその人影に駆け寄る。そして、それが愛しい恋人の姿であることを確認すると同時に、相手を抱きしめた。

「…要くん!!」
「!…先生!」

しゃがみ込んだ要くんは、雪を被っていた。その雪を払いながら、待っていてくれたことに感動する。

「要くん、こんなに遅れちゃってごめんね。待っててくれてありがとう」
「ホント、遅いですよ。何かあったんじゃないかって…、心配しました」
「本当にごめんね。仕事終わんなくて携帯も充電切れちゃって…。でも、ちゃんと屋根の下に入らなきゃダメだよ?風邪引いちゃう」
「…だって、ここ離れたら、先生俺のこと見付けられないじゃないですか」

携帯繋がんないし、とむくれて言う要くんに、申し訳ない気持ちで一杯になる。こんな寒い中、ずっと待っていてくれたなんて…。
こんな幸せなクリスマスがあるだろうか?

「要くん、本当にありがとう」

そっと頭を撫でながらお礼を言えば、要くんは頬を赤らめて俯いてしまった。そんな照れ屋な恋人の手を引いて、俺達は夜のデートを始めた。




(あ、プレゼント忘れちゃった)(…一緒に居られればいいです)

- END - 





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