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「……ふぅー」
仕事を終えて帰宅した俺は、玄関の前で大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせていた。
今日は、要くんが初めて家に泊まりに来る日。鍵は渡してあるから、彼はきっともう中にいるだろう。この扉を開ければ「お帰りなさい」と好きな人が迎えてくれることや初めての泊まりということを考えれば、緊張しないはずがない。
「ふぅー、……よしっ」
もう一度深呼吸をしてから、心を決めて扉を開けた。するとそこには…
「あ、こーちゃんお帰り〜」
「せんせ〜、お帰りなさ〜い」
ひらひらと笑顔で手を振るあきらと、赤みがかった顔で笑って抱き着いてくる要くんがいた。
……俺、部屋間違えたかな?
「せんせー、遅いー」
「か、要くん?どうしたの?っていうか、何であきらがいんの?この状況は何なの?」
「あははっ、こーちゃん一遍に聞き過ぎー。あのね、こーちゃんと飲もうと思って来たら、要くんと玄関前でちょうど会ったの。だから、一緒に入らせてもらったんだー。それで先に一緒にお酒飲んでたー」
「……はぁぁ!?」
思わず持っていた鞄を落とした。
だって、えぇ!?こいつ今、酒って言わなかったか!?飲ませたのか?未成年の要くんに酒飲ませたのか!!?へらへら笑ってる場合じゃないよ、何やってんだよ!ホントに何やってんだよ!!
「あきら!お前何やってくれてんの!?」
「あ、こーちゃん、僕今日はもう帰るね」
「はぁ!?お前、何勝手なこと言ってんの!?」
「狼さんの檻にはちゃんと鍵掛けておきなよ?それじゃ、バイバーイ」
意味の分からない言葉を残し、あきらは家を出て行った。
目の前には、あきらのせいでだいぶ酔っているであろう要くんが、抱き着いたまま離れないでいた。
どうすんだよ、この状況…。
「あ〜…、要くん?ちょっと離れてくれないかな?」
「いーやーでーすー!」
「嫌って…。俺、着替えたいっていうか、先ずはリビングに行きたいんだけど」
「………じゃあ、きすしてください」
……はい?え、なに、…え?俺の聞き間違いだよな?
お酒のせいで赤くなっていた頬をさらに赤くして、要くんはもう一度呟くようにキスをねだってきた。
…ヤバいかも。漸くあきらの言った意味が分かり、この後はどうやって切り抜けようかと、必死に考えを巡らせることになった。
(俺の理性が切れるまで)(あと30秒)
- END -
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