log | ナノ
また囲まれてる…。
やっと生徒会の仕事を終えて帰ろうと廊下に出れば、大好きなあの人が目に入った。女子に囲まれてるあの人が。
何でこんな時間まで残ってんだよ。何にもすることないなら、早く帰ればいいだろ?先生も笑ってないで早く帰りなの一言くらい言えよ、なんて理不尽な苛立ちが俺の心を支配する。
あぁ、嫌だな、こんな自分…。女子特有の高い声が耳障りで、自分の醜い心の声が聞きたくなくて、耳を塞いだ。目も閉じた。意味なんてないことは分かってるけど、少しでも逃れたくて…。



「…要くん?」

しっかりと耳を塞いでいたはずなのに、やけにその声だけはクリアに聞こえた。ゆっくり目を開けると、そこにいたのは案の定先生で、いつの間にか女子生徒達はいなくなっていた。

「どうしたの?具合でも悪い?」
「…いえ、大丈夫です」

心配そうに顔を覗き込む先生を真っ直ぐに見ることができない。俯きながら足元を見つめることしかできなくて、ふいに視界が歪んできた。
くそっ、何泣きそうになってんだよ。自分でもよく分からない感情が溢れてきて、気付けば思っていたことが口に出ていた。

「…先生は、どうして俺が好きなんですか?」
「えっ?」
「俺、素直じゃないし、先生に迷惑ばっかかけるガキだし…。それに、先生だったらもっといい人が他にいると思うし。モテるんだから、一人も好みの人がいないってわけじゃないでしょう?」

嫌なことばかり言ってるのは分かってる。でも、聞かずにはいられない。不安で仕方ないから…。そんな俺の言葉を聞いた先生は、はぁ、と小さくため息をついた。あ、嫌われたかもと思ったけど、その瞬間には抱きしめられていて思考が上手く働かなくなる。

「あのね、要くん。俺は、君だから好きなんだよ?他の誰でもなくて、要くんが好きなの」
「…なん、で?」
「理由なんてないよ。素直じゃなくて、何にでも一生懸命で、すごく照れ屋さんで…。そういう要くんが好きなんだよ」

先生はにっこりと笑ってそう言い、優しくキスをしてくれた。ここが学校だとかそんなことは今はどうでもよくて、俺は暫く先生の温もりを感じていた。





(一緒に、帰りませんか?)(うん!そのまま家においで)

- END - 





1/2

 
←back

×
- ナノ -