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「要くんっ、あのね、要くんと俺の共通点を色々見付けたんだよ!」
ある休日、先生の家に入るなりそう言われた。
目を輝かせて楽しそうに言うその姿は、もうすぐ三十路になる大人には見えなくて、可愛いなぁとか不覚にも思ってしまったり。
でも、言っている意味は分からない。共通点?何のこと言ってんだ?意味を理解できないままポカンとしている俺を気にせず、先生はニコニコとしながら話を進める。
「先ずは、言うまでもなくメガネってとこが一緒でしょ?コンタクトが普及してる中珍しいよね」
いや、珍しくないです。目が悪い人も増えてますから。
「あとはね、干支も一緒なんだよ!ちょうど12歳違いだからね」
あー、そうですね。それは気付きませんでした。
「あとあと、二人とも下の名前のイニシャルがKなんだよ」
それくらいなら珍しくないですよね?苗字も名前も一緒でしたら少しは凄いと思いますけど…。
「あとはー、高校が一緒。俺も昔は通ってたし、今はそこの生徒と教師だしね!」
そういえば、先生は俺の先輩でもあるんでしたね。
「あと、お互いを大好きって気持ちが一緒だよね」
…むしろ、それが同じじゃなきゃ付き合ってません。ってか、恋人とか夫婦ってほぼ皆そうですよね?
「あとはネクタイ。俺の真似だよね?」
…バレてたのか!
先生に放課後授業をしてもらったとき、先生がネクタイを緩める姿を見てカッコイイと思った。だから、俺は次の日からネクタイは緩くすることにしたんだ。それがバレてたなんて…
「あ、あの、何でそれを…」
「ん?それは、要くんのことしか見てないからかな」
「ダメな教師ですね」
「ハハ、そうだね」
先生は困ったような顔をして笑った。
干支が同じだとか、イニシャルが同じだとか、他の人にとってはどうでもいい些細なことだけど、先生の中では大切なことで。先生がネクタイのことに気付いてくれたのも小さなことだけど、俺の中では大切なことで…。
俺達はそんな小さな幸せを共有していけたらいいなぁ、なんて思ったりした。
(どんなに小さなことでも)(俺達には意味のあること)
- END -
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