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午前0時。
僕はこーちゃんを呼び出して、桜を見に行った。街灯によって浮かび上がるそれは、昼間とは違った独特の雰囲気を醸し出している。目の前にある大木を見上げ、たくさんの桜の雨が降ってくるのを見つめた。
はらり はらり
静かに舞い散る花びらは、地面に白い絨毯を敷いていく。風に吹かれて、飛ばされて。なんて呆気なく散っていくんだろう。けれど、また一年経てば桜はまた満開になり、人々に春の訪れを感じさせる。まるで、それが自分の役目だとでもいうように…。
僕は再び桜の木を見上げた。綺麗としか言いようのないそれに、見ているだけで引き込まれそうになる。どこか、現実ではない世界に。
「ねぇ、こーちゃん。桜って何でこんなに綺麗なのかな?」
「ん〜、何でって聞かれてもなぁ」
「ふふっ、分かるわけないよね。だって、理由なんてないだろうから」
「じゃあ聞くなよ」
「ねぇ。じゃあさ、来年も再来年も十年後も…、ずっと僕と桜を見にきてくれる?」
くるりと後ろを向いて笑顔で問い掛ければ、こーちゃんは困ったように笑いながら「こんな夜中にじゃなければな」と答えてくれた。
何十年経っても、桜の木はここで今と変わらぬ花を咲かせているだろう。
(僕らの恋も)(桜のように永遠に)
- END -
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