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…バレンタインなんて嫌い。だって、悠太が女子にとられちゃう日なんだもん。
お昼だって呼び出されたりして一緒にいられる時間が少なかったし、今だって二人で帰ろうと5組まで迎えに来たのに、女子が悠太を呼び出した後だった。だから、仕方なく自分の教室に戻って、悠太が来るのを待つことにする。何で悠太は、女子なんかについてくのかな?
俺は悠太が恋人だってことがあるし、女子からのチョコなんて興味ないから呼び出しには応じない。でも悠太は優しいから、女子からの呼び出しを絶対に断ったりしない。たとえ俺といる時間が減るとしても…

「あーあ、俺って愛されてないのかなぁ…」
「…それは、俺に対して言ってるの?」

独り言のつもりだったのに、返事がして少し驚いた。
後ろを振り向けば、いつの間にか戻ってきてた悠太がいた。

「遅くなっちゃったのは悪いけど、別に祐希を愛してないわけじゃないよ?」
「…悠太は俺といる時間が減るの分かってて、女子の呼び出しに応じてるんでしょ」

俺が不貞腐れて言うと、悠太は「だから、ごめんってば」ってまた謝ってくる。俺は、別に謝ってほしいわけじゃないのに…。
ちゃんと分かってくれない悠太に、俺は更に不満をぶつける。

「それに、悠太は優しいからチョコだって全部貰って食べるんだもんね。俺は全部貰わなかったけど」
「…祐希、それは違うよ?俺、今年は一つも貰ってない」
「えっ?」

戸惑う俺に、悠太は「ほら」と言って鞄の中を見せる。覗き込み、底の方まで探してみるけどチョコは一個もない。
…どういうこと?

「呼び出しに応じたのは、貰わないのに話も聞かないんじゃ失礼だから。あと…」
「あと?」
「…あと、大切な人がいるから今年からずっと貰えないって伝えるためだよ。それにほら、俺は今年からあげる側になるからね」
「あげる、側?」
「そう。…はい、祐希」

そう言われて渡されたのは、チョコの入った袋。手作りのバレンタインのチョコだった。
…あ、そういえば最近、春の家にやたら行ってたっけ。ヤバい、すごく嬉しい。前言撤回しなきゃ。俺はちゃんと愛されてる。手には、愛情いっぱいのチョコ。目の前には、愛しい悠太。
俺は、今年からバレンタインが好きになりそうです。


- END - 





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