log | ナノ

「寒い…」

仕事を終えて校舎を出ると、ひんやりとした空気に肌寒さを感じた。最近はすっかり秋らしくなって、風が冷たい。早く帰って温かい風呂にでも入ろうと足早に歩き始めると、校門前に人影が見えた。

「あっ、こーちゃーん!」

歩く俺の姿に気付くと、相手はたたたっと駆け寄ってくる。姿なんて確認しなくても、声の主なんて分かりきっている。こんな呼び方をするのはただ一人なんだから。

「なんだよ、あきら。わざわざこんなとこまで来て」
「えへへー。今日はこーちゃんの誕生日でしょ?だから、ケーキとシャンパン持ってお祝いに来たの!早く帰ってパーティーしよ!」
「シャンパンってお前、今振ってたよな?ぶんぶん振ってたよな!?」
「えー?なんのことー?」
「惚けるな!まったく、何度言ったら分かるんだよ」

高校時代を思い出させるあきらの行動に、ため息をつく。
炭酸はあれほど振るなって言ったのに!ケーキは振らなくなったけど、どっちかっていったら振って被害が出るのは炭酸だろ?なんでそっちを未だに振ってんだよ!あーもう、なんか頭痛くなってきた…。
もう一度盛大なため息をつく俺の心境など知るはずもなく、あきらは俺の手を引いて歩きだす。

「ねー、こーちゃん。プレゼントは何が欲しい?」
「え?あー…、何でもいいよ」
「そう。じゃあ、今日はたくさんの愛をあげるねっ」

…はい?
たくさんの愛の意味が分からず、眉根を寄せた。大好きって言葉なら飽きるほどに聞いてるし、キスもまぁ、ね。その、だいぶしてくれるし…。つまりは、いつも通りってことかな。そんな考えを巡らせていると、頬をかるく摘まれた。何?と聞けば、あきらはふふっと笑って「こーちゃん、鈍感ー」なんてことを言う。意味が分からず反論しようとしたが、それはネクタイを引っ張られたことによって遮られた。そして交わされる深く甘いキス。いつもより長いキスに息が苦しくなってきたころ、やっと唇は解放された。息を整える俺の首に手を回し、あきらは耳元で囁く。

「…続きはベッドの中で、ね?」

その言葉にかぁっと身体が熱くなり、身体を離したあきらを見れば、彼はいつもより大人びた顔で笑っていた。




(妖しい笑みを浮かべた彼との)(忘れられない誕生日)

- END - 





3/4

 
←back

- ナノ -