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※文化祭終了後の話
二日間に渡る文化祭が終了し、装飾などが外された教室はいつもの殺風景に戻る。そんな少し寂しくなった教室にいるのは、先生と俺の二人だけ。
「文化祭、終わっちゃったねー」
「そうですね」
「今年の文化祭も楽しかった?」
「…疲れた」
「はは、要くん働きっぱなしだったもんね。お疲れ様」
そう言って先生は、柔らかく笑いながら俺の頭を撫でた。いつもは嬉しく感じるこの感触も、今は素直に喜べない。だから、なるべく自然に先生の手から逃れた。
「…?ねぇ、要くん。なんか、怒ってる?」
「別に」
「俺、なんかしちゃったかな?」
「なんでもないってば」
…嘘つき。"あの人"のこと気にしてるくせに。"あの人"のこと聞きたいくせに。
文化祭で会った先生の友達だという人。すごく仲が良さそうで、先生もなんかいつもとは違って見えて…。自分の知らない先生をあの人は知ってるんだって思ったら、少し胸が痛んだ。
嫉妬に似た感情。こんな心の狭い自分、嫌になる…。俯く俺を心配そうに覗き込みながら「ね、大丈夫?もしかして具合悪い?」って声を掛けてくれる先生。
違う、そうじゃない。そうじゃないんです。
「…先生。あの人は、先生の何、ですか?」
…聞いてしまった。
だって、どうしても気になったから。あの人との関係が、ただの友達だと思えなかったから
「え、あの人って?」
「先生の友達って言ってた…」
「あぁ、あきらのこと?あきらは俺の親友だよ」
「…本当に、それだけですか?親友なだけですか?」
「うん、そうだよ。どうかしたの?」
「…あの人、理想のお嫁さんは先生みたいな人だって言ってました。それに、その…、腕組んだりしてたし…」
だって、いくら親友だからって理想のお嫁さんに名前をあげるか?俺だって悠太とか祐希とか春とか…、まぁついでに小ザルも他の奴らより仲は良いけど嫁に欲しくはない。腕も組んだりしない。だから、あの人は先生にとってもっと特別な存在なんじゃないの?
「要くん…。もしかして、ヤキモチ?」
「っ!ち、ちがっ」
「大丈夫だよ。あきらは本当にただの親友だから。確かに特別ではあるけど、要くんの特別とはまた違うよ。一番大好きなのは、要くんだけだからね」
「…ん、分かっ、た」
「じゃ、そろそろ帰ろっか」
にっこり笑って手を差し延べてくれる先生。その手を握ったときには、さっきまでのモヤモヤした気持ちはどっかにいっていた。ちょっとしたことで不安になったり、嫉妬したり。全然余裕なんかないけれど、きっと恋愛なんてそんなもの。
…とか、柄にもなく考えてみた。
(あ、一緒に写真撮るの忘れた!)(…どこの学生ですか)
- END -
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