A requiem to give to you
- 白銀に歌う追複曲・前編(6/6) -



「まぁ、それは今は置いておきましょう。そもそも何故、音素がない筈の貴女のレプリカが生まれたのかが、そもそもの問題なのです」

「どう言う事なの?」



タリスがそう疑問を口にする。それにレジウィーダが答えた。



「レプリカ情報は被験者の細胞を構成する音素の情報から取るんだって。だから音素が存在しないあたしから本来は情報が取れる筈がないんだ」



当然ながらレプリカは元となる情報がなければ作る事が出来ない。なのにフィリアムは生まれ、この世界に存在している。



「ここまで話しちゃったからもう言うんだけど、あたしは以前にもこの世界に来た事があるんだ。その時にいたのがこの街だったらしいよ」

「らしい? 自分の事なのに覚えてないの?」



アニスの最もな疑問にレジウィーダは笑うと「まぁ、そう言うことにしておいて」と回答を暈しつつ続けた。



「時間軸的には、それこそジェイド君やディスト、ネフリーさんが子供の頃ってくらい前なんだけど」

「ディストから聞いてたけど、改めて聞くとなかなかツッコミどころ満載だな」



コレの子供時代とか想像出来ねェとグレイは呟く。

ルークはあれ?とある事に気が付いた。



「ジェイドがこの街の出身で、レジウィーダが昔この街に来たことがあるって事は……もしかしたら二人は知り合いだったのか?」

「どうだろうねー。少なくとも”あたし”はセントビナーで初めましてだから」



そう言って笑うレジウィーダだったが、「初めましてだ」と言っているのに加え、ジェイド自身もこれについて補足などもなさそうなところ、これ以上の追求をするつもりもなくルークはどこか煮え切らないながらも「そっか」とだけ返した。



「あぁ、それでね。どうにもディスっちゃんが昔のあたしについて知っててさ。何でか知らないけど、あの人らが子供の頃に埋めたって言うタイムカプセルからあたしのレプリカ情報が出て来たから、それを元に作ってみたらフィリアムが生まれたんだって」

『ちょっと待った!!』



続けられた言葉に数名のツッコミが重なる。



「なんかいきなり雑になってない!?」

「子供の頃とは言え、何て物を埋めているのよ……」

「いや、それ以前になんで音素がないって言われてるのに情報が出てくるんだ?」



アニス、ティア、ヒースがそれぞれの疑問を口にする。特にヒースの疑問にはジェイドやグレイ、タリスも思っていた事らしく、彼女の返答が気になっていた。



「それはディスっちゃん自身にもわからないんだって。だからその辺何かヒントがあるかなーって思って、旅の途中でここに立ち寄った時にネフリーさんにタイムカプセルを見せてもらっていたんだ」

「それで、何かわかったのですか?」



イオンが問うと、レジウィーダは首を横に振った。



「情報はディスっちゃんが回収した分だけだったし、それ以外は………特に何の変哲もない子供達の思い出だったよ」

「じゃあ、結局は謎のままなのねぇ」



そう言うこと、とタリスの言葉に頷いて返すとレジウィーダは両腕を上げて伸びをする。それを見た面々も少し疲れたように肩の力を抜いて楽な姿勢を取り始めた。



「なんか……理解が追いつかねぇ」

「はは、本当だな」



げっそりとしたルークがそう言い、ガイも苦笑して頷く。



「当人達でもわからないんですもの。こればかりは継続して調べていくしかありませんのよね」

「協力するって言っておいてアレだけど……なかなかだっる、いや大変なんですけどぉ」



悩ましげなナタリアと本音が隠しきれていないアニスにレジウィーダは笑った。



「別に言い直さなくても良いよ、ダルいのは事実だし…………でもまぁ、今すぐに調べなくちゃいけないってわけでもないから、皆を手伝いながら合間を見てやっていくよ!」

「もう、本当レジウィーダってポジティブすぎなんだけど」

「ふふ、でもそこが彼女の良いところではありませんか」



アニスがぐったりしながら言った言葉にイオンがそう返しながら微笑むのを見て、ルークが「お前も似たようなモンだよ」と突っ込んでいた。



「…………………」



一見穏やかな空気が戻りつつある雰囲気の中、話題の中心人物を静かに見つめる者がいた事には、誰もが気が付かなかった。











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