A requiem to give to you- 白銀に歌う追複曲・前編(4/6) -
「まぁ、それが本当かどうかは一先ずおいて置くとして。貴女の言い方ですと、ご自身の能力については何か知っているようですが?」
それは聞いても?
そうジェイドが言うと、レジウィーダは頷いた。
「うん……と言っても、説明できる事として一番の要因は異次元を超えた事、なんだけどね」
「それだとオレ達も当てはまるだろうよ。況してやオレだって別の世界に行った事あるンだぜ?」
うる覚えだけど、と補足を入れながらの言葉だが、ヒースとタリスは驚きが隠せなかった。
「いや、初耳なんだけど!?」
「本当よ! …………でも、道理でどこかしら慣れている感じがあったのね」
「まぁ、それに関してはごめんね。当時は言っても信じてもらえるかわからなかったから……」
申し訳なさそうに謝るレジウィーダの気持ちもわからなくはない。二人はそんな彼女に大きな溜め息を吐きながらも「今度詳しく教えて」とだけ言った。
「あ、それでなんだけど。原因、て言うか要因として補足しておくと、あたしが《異界の門》の持つエネルギーと親和性が高いからなんじゃないかなって思う」
「《異界の門》?」
聞き覚えのない単語にルークは不思議そうに返した。言葉にはしないが、他の仲間達も同じような表情だ。
「あたし達の世界にある、異世界へと通じる場所。本当は世界のツボって言うか、龍脈とも言える、莫大なエネルギーの集約場。実際に別の世界に行けることから、あたしはそう呼んでるんだ。所謂《異次元エネルギー》とでも言うのかな。そのエネルギーの影響を受けて使えるようになったのかなって思ってる」
「成る程全くわからん」
ヒースがそう突っ込むが、その手の知識も経験もないのだから致し方がないのだろう。ルークに至ってはそろそろ話が追いつけなくなり始めている。
「細かい理論については専門家でもねーから詳しくはわかンねーけどよ。取り敢えず今は深く考えなくても良さそうか?」
「まぁ、今のところデメリットらしいものもなさそうだし、良いんじゃないかしら?」
「大丈夫っしょ。多分」
多分かよ、とは今更突っ込む者もいない。
それからグレイが思い出したように「あ」と声を上げた。
「門についてだけどよ、本来はそう簡単に開くモンじゃなく、力を抑える為の《鍵》もある」
ただ、とそう言って続け……そして肩を竦めた。
「オレが持ってた筈なんだけど、いつの間にかコイツに預けてたみたいでな。それでこの世界に落として無くしたらしい」
「それって……大丈夫なの?」
アニスが呆れたようにそう言うと、レジウィーダは苦笑した。
「詳しい経緯は省くけど、ジェイド君が拾ってくれたみたいだから今度返してもらう約束してるんよ」
「だからグランコクマへ行くとあの時言っていたのね」
タリスはいつかバチカルでレジウィーダの言葉を思い出す。何故理由もなくジェイドについて行くと言ったのかがわからなかったが、そう言う事情があるのなら仕方がなかったのだろう。
「仮に目的が達成出来ても帰れなかったら意味がないからね。無事に帰る為に《鍵》は必要だから」
「あとはこっちから向こうに帰る為の入口を見つけなけりゃなンねーけどな」
「そこまではわからないの?」
タリスの問いにグレイは苦虫を噛んだように顔を顰めた。
「それっぽい所は探してるけど、今の所は見つかってねーな」
「そうなのか………また一つ課題が増えたな」
痛むこめかみを抑えながらのヒースの言葉にタリスが「でも」と言った。
「これで一人で探す必要は無くなったじゃない?」
「そうですわ! わたくし達だっているのです。皆で協力すればいずれは見つかる筈ですわ」
タリスの言葉にナタリアも同調する。そしてガイやイオン、アニスも頷いた。
「どうせこれからまだまだ色んな場所に行くことになりそうだしな」
「僕も、出来うる限り協力します」
「ちゃーんと報酬は弾んでもらうけど、それならアニスちゃんも手伝ってあげる♪」
「私も」
ティアが優しく微笑む。
「あなた達にはたくさん迷惑をかけたし、助けられてきた部分もあるわ。だから、一緒に探させて」
「ティアちゃん。皆も……ありがとう!」
レジウィーダが嬉しそうにお礼を言う。それを見てジェイドは「皆さん若いですねぇ」と相変わらず年寄り臭い発言をしていた。
それを見てルークが突っ込んだ。
「いや、この流れであんたは手伝わないのかよ」
「老体に重労働は……あー、げっほげっほ」
そんな棒読みと態とらしい咳をするが、レジウィーダ達は気にする事なく、寧ろいつも通りな彼に安心したように笑った。
「それでこそジェイド君。それよりルー君はー?」
手伝ってくれないのー?
と、ニヤけながらの言葉にから揶揄われている事がわかったのだろう。ルークはムッとしながらも「ンなわけねぇっつーの!」と返した。
「ちゃんと手伝うよ。あんた達にはいくら返しても返し切れないくらい沢山の恩をもらったんだ……必ず、元の世界に返す道を見つけるから!」
真剣な表情でそう宣言したルークにレジウィーダ達は顔を見合わせると、それから彼を向くと今度こそ揶揄うことなく「ありがとう」と返した。
それからジェイドは「さて」と話を戻すように声を上げた。
「レジウィーダの話は大体わかりました。まだまだ聞きたいことはありますが、今は良いでしょう」
それで、
「他の三人はどうですか?」
「オレは概ねコイツが言った事と大差はねーな。ヴァンの目的についても、アンタらが知っての通りだ」
「その目については?」
なんでいつの間にか両目とも変わってるんだよ、とヒースが言うと、他の面々も気になっていたようでうんうんと頷いていた。
しかしグレイは「さあ」と肩を竦めるだけだった。
「トゥナロの野郎が関係してるって事くらいしかわかンねェ」
「先程も名前が上がっていましたが………もしかしてトゥナロ・カーディナルの事でしょうか?」
思い当たる事があったらしく、イオンが思い出すようにその名を口にした。
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