A requiem to give to you- 再出発(5/5) -
「イオン様とナタリア、そしてヒースがフィリアムの率いる神託の盾に連れて行かれました」
恐らくモースの仕業でしょう。そう言ったジェイドの告白に全員が驚き、ルークは「何だって!?」と声を上げた。
「おや、ルーク。いたのですか」
ジェイドはさも今気が付きましたと言うようにルークを見るとそう言った。その声は今までのようなふざけるながらもどことなく柔らかった雰囲気はなく、冷え冷えとするものを感じ、ルークは言葉に詰まってしまった。
「あ、その───」
「まぁ、私達の邪魔さえしなければ何でも良いですがね。兎に角、モースに私達が生きているのを知られている以上、イオン様やナタリアを彼らの手に置いておくのは危険だ。申し訳ありませんが、また皆さんにはご協力をお願いします」
ルークの言葉を遮り捲し立てるようにそう言うと、何かを言うタイミングを逃した一同は、けれど急がなければならない事実に頷くしかなかった。
「………………」
再び足を進め始めた仲間達を背にルークは落ち込んだ表情で着いていく。そんな彼の姿に、ティアはルークの隣に来ると感情を飲み込んだように重々しく口を開いた。
「一度失った信頼を取り戻すのは難しいのよ。今は、受け入れるしかないわ」
「そうだな」
ティアの言葉に意外にも同意したのは近くにいたグレイだった。
「アクゼリュス崩落以前に、元々崩れやすい関係だったんだ。壊れたんなら、また地道に作り直すしかねーよ」
「ティア、グレイ………」
「ま、その辺に関してはオレも同じようなところがあるからな。…………仕方ねェから付き合ってやるよ」
だからいつまでもしょげてンじゃねーし、と拳を作り軽くルークの頭をコツンと叩くと先へと進んでいった。そんなグレイを見て、ティアは小さく笑った。
「ああして手を伸ばしてくれる人もいるのよ。それはきちんと受け取らないとね」
「……そうだな。ティアも、ありがとう」
ルークは頷き、ティアにそう言うと彼女は顔を背けた。
「私は何もしていないわ。お礼を言うならグレイに言いなさい」
「勿論それもそうだけど、さ。でもティアだって心配して声をかけてくれたじゃないか。だからこのお礼も素直に受け取ってくれると……嬉しい」
「………はぁ、まさか貴方にこんな事を言われる日が来るなんて」
溜め息混じりの言葉だが、その声は決して冷たくはなかった。やがてティアは「わかったわ」と頷いた。
「でも、前に言った事は撤回はしないから」
「わかってる。だから、これからの俺を見ててくれ」
そう言ってルークは一つ息を吐くと、気を引き締めて皆の後を追うべく走り出した。
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