A requiem to give to you
- 再生を求めて(6/8) -



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アニスの案内により、セフィロトまでは暑さ以外に特に苦も無く辿り着く事が出来た。それからイオンにダアト式封咒を解除してもらい、奥へと進んだ。流石にセフィロト内の構造まではアニスも入った事がなかった為、グレイと共にフラつくイオンの側に付き後方へと行った。

毎度お馴染み、しかしセフィロト毎に違う妙に凝った仕掛けを解いていき、やがて最深部まで辿り着くと、いつも通りルークの超振動でパッセージリングを操作していく。



「……終わったよ」



ルークが大きく息を吐きながら振り返る。今回は比較的スムーズに行えたのではないだろうか。しかし全身から滴る汗は、決して疲れからではない。



「早い所こっから出よう」



グローブで額の汗を拭いながらヒースがそう言うと、全員が頷く。やはり火山だけあり、外よりはマシだが相当な暑さだ。ただでさえ扉を開けた体力が戻っていないイオンもいるのだから、用が終われば長いする必要はない。



「レジウィーダがいなくて良かったかもなぁ」



来た道を戻りながらガイが苦笑する。それにルークも確かに、と頷く。



「この暑さじゃ、下手したらひっくり返ってたかもな」

「それを言ったら、フィリアムも暑さが苦手なのではありませんか?」



ジェイドが思い出したようにグレイを見る。



「あー………確かにあいつも寒さには強いけど、暑さは苦手だったな」

「そう思うと何だかんだであの二人って似てるんだな」

「まぁ、情報源が同じなら似はするだろうよ。お前とアッシュだってそうだし」



その言葉に反応したのはナタリアだった。



「グレイから見て、アッシュとルークはどう似てると思いますの?」

「どう? ………顔や背丈は当然だけど、性格的なところで言うなら」

「言うなら?」

「沸点の低さが割と同レベル」



どこか期待したような顔をしたルークはガクッと肩を落とす。



「なんっだよそれ」

「て言うか、沸点の低さはグレイも相当低いじゃん」

「オレの事は今は関係ねェだろ」



呆れ顔のアニスにそう返しつつ、グレイは更に続けた。



「後は食べ物の好き嫌いだとか、多分だけどあいつも元々は左利きだったンだろうな。咄嗟に何かをする時に偶に左手が出る時がある」

「へぇ、あいつ左利きだったんだ」



意外そうに目を丸くするルークに補足を入れたのはガイだった。



「それに関しては、まだキムラスカにいた頃に矯正したんだよ。テーブルマナーだとかは基本的に右からって決まりがあるからな。あいつは小さい内に直したんだ」

「そうなんだ……」

「そう落ち込むなって」



と、ガイは少しだけ翳りを見せるルークの肩を叩いた。



「その文化も今は少しずつ変わってきてるんだ。それでもあいつは望んで直しただけの事で、別にお前がやらなかった事を落ち込む必要はないんだ。それに……そもそもそう言う事もちゃんと教えなかった俺や周りの人間がいけないんだから」

「ガイ……」

「ま、もしも矯正したいって言うんだったら、平和になった世界でゆっくりとやれば良いんだからな」



時間はたっぷりとあるんだからさ。

そう言って笑うガイ。それにルークも目を細めて笑うと小さく頷いた───その時だった。



「………………!」



突然、ヒースが辺りをキョロキョロと見渡し出した。それにジェイドが「どうしましたか」と聞くが、彼はその問いには答えずに何かを探し続けている。



「………いる」

「いる……って、───あ、もしかして!」



ヒースの呟きに首を傾げたルークだったが、直ぐに何かに気がついたようにハッとした。



「音素集合体がいるのか!」

「この辺りですと、第五音素集合体【イフリート】でしょうか」

「逆にそうじゃなければ天地がひっくり返るだろうな」



冷静に分析するジェイドに鼻を鳴らすトゥナロ。そんな事を言ってると、ヒースは仲間を振り返り口を開いた。



「ちょっと、先に行ってくる!」



そう言うと出口の方へと走って行ってしまった。



「あ、おい! 俺達も行くよ!」

「音素意識集合体なんてこの目に拝めるチャンスなんて滅多にないからな!」

「わたくしも行きますわ!」

「あ、ずるーい! アニスちゃんも見に行きたい!」



慌てて追いかけるルークにガイやナタリア達も続く。それにアニスも駆け出そうとしたが、しかしイオンの事を置いてはいけないのだろう。声を上げるだけに留めた彼女にイオンが笑った。



「アニス、行って来て良いですよ」

「え、でも……」

「大丈夫。大分体力も戻って来ていますし、グレイやティアもいますから、僕の代わりに見て来て下さい」

「いや、怪我人や病人ばっかりなんですけど!」



この辺りのモンスターはある程度倒したから襲われる心配は少ないとは言え、誰一人として万全の状態じゃない。残して行く事に不安しかない、と言う彼女の考えは決して間違いではない。しかしイオンはもう一度「大丈夫です」と言うとトゥナロを指差した。



「何かあれば、一番元気な人(?)に何とかしてもらいますから」

「オレかよ」

「でも事実、あんたが一番動けるンだよな」



フッ、とどこか遠い目をしたグレイがそう言う。それにトゥナロは至極面倒臭いと言いたげに溜め息を吐いたが、やがて諦めたように前足を振った。
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