A requiem to give to you
- 再生を求めて(3/8) -



「私としても、またこの三人で研究が出来るのは嬉しいわ……だけど、スピノザのした事を考えるのなら、この事を私達の一存で決めてしまって良いのかしら?」

「それなら、わたくしが命じますわ」



そう言ってナタリアが前に出た。



「ベルケンドへ行き、知事に命じ計らってもらいましょう。スピノザにはキムラスカが責任を持って彼を監視し、その上で研究を進めてもらいます」



その言葉に漸く三人の顔に喜びが浮かんだ。



「〜〜〜〜っ、《ベルケンドい組》の復活じゃな!」

「ええ! また三人で出来るのね!」

「ああ………また、よろしく頼む!」



喜びに涙を流す彼らにルーク達はホッと息を吐く。そして話がまとまった所で、ジェイドが声を上げた。



「それでは、早速ですが急いでベルケンドへ向かいましょう」

「イエモンさんや、シェリダンの人達はどうする?」

「リグレットもいましたし、まだ戻るには危険かも知れません。もう暫くはここにいて様子を見た方が良いでしょう。幸い、情報には困らなさそうですしね」



ルークの問いにジェイドがそう答え、そして一同は納得した。



「そう言えばここって、漆黒の翼のアジトでもあるんだったな」



そう、このナム孤島の主人にしてサーカス団《暗闇の夢》の団長と言うのが、あの漆黒の翼のリーダー・ノワールだったのだ。元より、今はここにいないタリスが彼女と面識があったらしく(それでもアジトの場所は知らなかったらしいが……)、霊魂を使って上手い事彼女と交渉をしてくれたお陰で、今回のシェリダンの住民の避難が行えたのだ。義賊と歌う彼女らの今までの行いは決して看過できる物ばかりではないが、以前バチカルでの騒動の事や今回の事での借りもあるので、一先ずは目を瞑る事となった。

ヒースの言葉にガイも苦笑した。



「そうだったな。確かにあいつらなら、いつだって色んな情報を手に入れる事だって出来るだろ。だからこまめに街の様子を見てもらいながら、機を見て住民達を帰して行こうぜ」

「僕も、それが良いと思います。……ただ」



と、イオンも困ったように笑う。



「皆さん、とっても楽しそうに過ごしていますから………帰りたがらない、なんて事にならなければ良いのですが……」

「それ、結構あり得そうなんですけどぉ……」



イオンの言葉にアニスを初め、皆一抹の不安を覚えざるを得なかった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







それからルーク達はグレイ、そして再び仔ライガへと自ら憑依したトゥナロを伴いベルケンドへと赴いた。障気中和の研究をヘンケン達に委任する命を出し、またスピノザへの監視の為、キムラスカ兵の派遣を申請する為に知事の元へと向かった。(なお途中、グレイはヒースと共に病院へ行く為別れた)

そして無事に許可証を発行し、技術者達を元の研究室へと送り出した後、ルーク達もまたグレイ達と合流すべく病院へと向かう。



「グレイ、大丈夫でしょうか」



道すがら、イオンが心配の声を上げる。それに隣りを歩いていたアニスも難しい顔をした。



「うーん……正直、かなりキツそうですけどね。て言うか、骨が折れてギプスまで着けた状態で今後旅を続けられるのかも怪しいんじゃないですか?」

「彼は暗器や銃を中心に多数の小物を使用しますからね。いくら器用だと言っても、まともに動けない人を連れて行けるほど、我々も余裕はありませんよ」



ジェイドもそう言って同意する。どう見てもまともに戦える状態ではないのは誰もがわかっていた。だからこそ、はっきりと告げた彼の言葉にルーク達も複雑な表情を隠し切れなかった。



「じゃあ、ここで置いて行く事になるって事か……」

「───それが出来たら、良かったんだけどな」



残念そうなルークの言葉にふと小さな笑い声が耳に入る。仲間達がその主を振り返ると、いつの間にかルークの膝上くらいまでの大きさになった仔ライガがいた。



「トゥナロ、」

「何も正面切って相手を傷付けるだけが戦いじゃないんだぜ?」

「つまり……どう言う事だ?」



ルークが問うと、トゥナロは答える。



「あいつは、小細工をする事にかけてはその辺の奴らには負けねーよ。それに目的の為なら手段も選ばないからな。お前達が駄目だと言っても、今のあいつだったら何としてでも戦いに参加してくるだろうよ」

「あのグレイが? まさか」

「いや、確かにそれは有り得るかもな」



と、ガイが苦笑した。彼はナム孤島でのヒースとのやり取りを見ていた。だからこそ、わかるのだろう。



「それにタリス達の事もあるし、黙って待ってるなんて事……するような奴じゃないよ。あいつは」

「……そう、だな。けど、」



ルークが何かを言いかけた時だった。



「何勝手に人の話をしてンだよ」



目の前からグレイ達が歩いてきた。どうやら話が聞こえてきたらしく、グレイは不機嫌そうに顔を顰めている。



「グレイ、通院は終わったのですか?」

「ああ、まぁ……一先ずな」



イオンの言葉に少しだけ歯切れ悪く頷く。そんな彼にジェイドも「どうだったんですか」と問うた。



「案の定、入院を勧められてたよ」



ヒースが肩を竦めながら答える。やっぱり、と思いつつもルーク達は何となく、次のグレイの言葉が予想できてしまった。
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