A requiem to give to you
- 知らない時間とぶつけた本音(7/7) -



それに驚いたのはヒースだった。



「ガイさん……? 今、声が……」

「そうですわ! また、貴方達の言葉がわかりますの!」



ガイの代わりに答えたナタリアのその言葉に意味がわからないグレイは首を傾げ、ヒースは「いつから……?」と疑問を上げる。それにガイとナタリアは苦笑した。



「実は、さっきヒースがグレイを締め上げてる時に突然わかるようになったんだ」

「見てたんですか……」



げ、とバツが悪そうに顔を顰める。しかしガイもナタリアも気にした様子はなく、寧ろ面白そうにこちらを見ていた。



「そりゃあ、あんな絶叫やら怒声が聞こえてきたら見にも行くよな」

「ヒースの本来の姿を見れたようで新鮮でしたわ」

「いや、別に本来の姿ってわけじゃないですが………そもそも普段の方が素なんですけど」

「まぁ、口が悪いのは元からだからな」

「うるせぇよ」



お前にだけは言われたくない、と言えばグレイは明後日の方へと向いた。そんな彼に溜め息を吐いていると、ガイが「あのさ」と言った。



「そろそろソレ、良いんじゃないか?」

「ソレ、と言うと?」

「口調だよ。別にジェイドのように敬語が癖ってわけでもなさそうだし、立場とかもこの仲間内では殆ど関係ないんだしさ。そろそろ俺やナタリアにも普通に話してくれよ」



その言葉にナタリアも頷いた。



「ガイの言う通りですわ。ヒースだけですのよ、未だに畏まっているのは。ルークに対してだって普通ですのに、何だか距離を置かれているようで寂しいですわ」

「そんなつもりはなかったんですけど」

「なら、良いじゃないか」



な、と二人から期待の眼差しを受ける。それに困ったようにグレイを見ると、彼は肩を竦めるだけだった。



(まぁ、別に拘っていた訳でもないし………良いか)



「───わかったよ。慣れるまではもう少しかかると思うけど……改めて、よろしく。ガイ、ナタリア」



そう言うと二人はとても嬉しそうに頷いた。そんな自分達を見守るように近くで純粋な第七音素の気配を感じたが、呼び出すのはもう少ししてからにしよう、とヒースは苦笑を漏らした。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「♪ ──────」



ダアトの教会内、シルフィナーレは機嫌良く歌を口ずさんでいた。今は大きな任務はないが、戻ってきたヴァンとリグレットが次の作戦を話し合っている間、シルフィナーレは暫しの休暇を言い渡され、久し振りにのんびりと散歩に出かけようとしていた。



(ああ、本当に……素晴らしい事だわ)



今までは確信がなかった事が、全て的中していた。

何となく、そんな気がする……と言った理由で異世界の者を突き落とした事が始まりだった。普通ならば死んでもおかしくはない高さから落ちたと言うのに、その存在は別の場所へと飛ばされた。そしてそれを施した人物が…………生きていたのだ。否、正確には生き返った……と言った方が正しいのか。



(何にしても、あの時のあの人の言葉………これは可能性が、あるわ)



見出した一つの可能性。それはかなりのリスクも伴うが、手にする事さえ出来れば今度こそ夢を叶えられるかも知れない。

フィリアムでレジウィーダを殺させる事で、その力を一つにさせる作戦は潰えた。しかし別に、何もそうしなくても……もっと簡単な方法が見つかったのだ。



(わたしが………直接やれば良いのよ。そうすれば───)



「フフ…………次に会う時が楽しみだわ」



貴女もそう思いませんか。

そう言って振り返った先には、白と黒の衣装を身に纏う女性。顔は被り物で伺えず、シルフィナーレの言葉に返事すらも返さないが、その雰囲気はどこか楽しそうだ。それだけでもシルフィナーレは満足だった。



「早く貴女の正式なお披露目もしなくては、ですね」



そう呟くとシルフィナーレは再び歌を口ずさみ始め、そのままどこかへと歩いて行った。











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