A requiem to give to you
- 再出発(2/5) -



そう言ってガイはルークの前に来るとその変わった風貌に一瞬目を丸くし、それからニッと笑った。



「へー、髪切ったのか。良いじゃんか、さっぱりしてさ」

「ガ、ガイ……」

「あん? どうした?」



嬉しさ半分、悲しみ半分と言ったルークの表情にガイが問うと、ルークは一層顔を暗くして言った。



「俺、ルークじゃなくて、レプリカだから……」

「オイオイ、お前までアッシュみたいな事言うなっつーの」

「でも、」

「良いじゃねぇか。あっちはルークって呼ばれるのを嫌がってんだ。貰っちまえよ」

「貰えって……お前、」



相変わらずだな、と言うとガイは気にした風もなく笑った。



「そっちは随分と卑屈になっちまったなぁ」

「卑屈って……」



ガイの言葉にルークはムッとする。しかし彼は構わず続けた。



「卑屈だよ。今更名前なんて何でも良いだろ。せっかく待っててやったんだから、もうちょっと嬉しそうな顔しろって」



太陽、まさしく彼に似合う言葉だろう。裏なんて感じないそんな彼にルークは目元が熱くなるのを堪えながら漸く素直に頷くことが出来た。



「ガイ……ありがとう!」



そんなルークの言葉にガイは今日一で目を見開いて驚いた。



「ルークが……ありがとう、だって!?」

「彼、変わるんですって」



成り行きを見守っていたティアがそう言って近付くと、今度は情けない悲鳴を上げて飛び退いていった。



「……貴方は変わらないわね」

「本当にねぇ」



なかなかに締らない男である。そんな一同の心の声が一致した瞬間であった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







ガイを伴い引き続き出口に向かって進んでいると、ふとグレイが足を止めた。



「どうしたー?」



レジウィーダがそれに気がつき声をかけると、他の仲間達も振り返って彼を見た。



「あー………多分だけど、オレがこの世界に来て最初にいた場所だ」



思い出すようなそんな言葉にレジウィーダも納得したように手を叩いた。



「そう言えばあの時やたらずぶ濡れになってると思ったけど、確かにここならそうなるね」

「ついでに言うとフィリアムや、不本意だけどディストと会ったのもここだな」

「そうだったのねぇ」



レジウィーダに続き、タリスも辺りを見渡しながら呟く。



「それにしても………同じ場所から飛んだ割には、随分と出た場所に差があるのねぇ」



況してやタリスはグレイと、レジウィーダはヒースと直前まで一緒に行動を共にしていた筈なのだ。なのにタリスはタタル渓谷、グレイはアラミス湧水洞、ヒースはバチカル、そしてレジウィーダはザレッホ火山……と、実に繋がりも不明である。

それにレジウィーダも「うーん」と悩ましげな顔をしていた。



「同じ場所になるかはともかくとして。普通こう言うのってパワースポットとか、龍脈とかみたいな膨大なエネルギーが放出するような場所に出る筈何だけどねー」

「火山や、火山と近いここは兎も角として、タタル渓谷とバチカルはよくわかンねーな」

「バチカルは大昔に巨大な隕石が落ちて出来たクレーターがそのまま街になったんだ。それが理由とか?」



レジウィーダの言葉に頷くグレイの言葉にガイがそう言うと、ルークが「そうだったんだ……」と呟いていた。



「もしかして……ルークがローレライの力を継ぐ者、だからとか?」



タリスの言葉にその場にいた全員が「え」と固まり、次いでレジウィーダは納得したように頷いた。



「そう言われると確かにちゃんとした理由になるかも。ダアト付近には火山があるのもそうだけど、同じ理由でアッシュもいるわけだし、そっちに寄せられたと考えたのなら……」

「でもそれだとタタル渓谷に出た理由がわかンねーままだぞ」

「それなんだけど、多分トゥナロさんじゃないかな」

「トゥナロ?」



聞き覚えのない名前にルークがそう問うと、レジウィーダは続けた。



「あたし達をこの世界に喚ぶのに関わった人、かな」

「貴方は覚えていないかも知れないけど、アクゼリュスが崩れる直前に少しだけ一緒にいたのよ」

「そうなのか?」

「あー確かに誰かいたような気がする」



けど、それどころじゃなかったからなぁとガイの言葉にティアも頷いた。



「それに気がついた時には直ぐにいなくなっていたし、私も話題に出されるまですっかりいた事を忘れていたわ」

「……まぁ、そうだろうね」

「レジウィーダ?」



どことなくぎこちない苦笑を浮かべる彼女に気が付いたタリスが尋ねると、レジウィーダは首を振って「何でもないよ」と返した。



「話を戻すと、トゥナロさんは本人曰くローレライの使者なんだって」

「は!?」

「ちょ、ちょっと待って!」



さらりと告げられた言葉にルークとガイは驚き、ティアが待ったをかけた。



「ローレライの使者ってどう言うこと? 現存するのかもわかっていないし、そもそも音素集合体に使者がいるなんて聞いたことがないわ」

「あくまでも自称だからな。だけどこの世界にオレ達を喚んだのがローレライだって言うンなら、何かしらの関わりがあるのは間違いねーだろうな」

「ローレライ……か」



ティアの疑問にレジウィーダの代わりに答えたグレイ。それを聞き、己に深く関わっているその存在に思うところがあるのだろう。ルークがその名をぽつりと呟く。

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