A requiem to give to you
- 未来が夢見たモノ(7/7) -



「フィリアム、一つだけ教えて欲しいのだけれど」

「何?」

「あのね──────」



























「────── ──────」






































「……………………………………そっか」



涙子は満足そうに頷いた。そんな彼女にフィリアムは戸惑っている。



「こんな答えで、本当に良いのか? 本人に聞いた方が良いだろうに」



大丈夫よ、と涙子は答える。



「あの子の性格上、ストレートに聞いたところで素直に言わないわ。だから……良いの」



そう言って涙子は踵を返した。それから少しだけ振り返るとフィリアムに笑いかけた。



「今日は本当にありがとう。また明日、改めて行くわね」

「あ、うん…………また明日」



そんな彼の言葉を背に歩き出す。

最初はゆっくりと、それから少しずつ………少しずつ足を早めていく。



「…………………」



────
───
──



『涙子、一つ提案なんだが』



朝、父・秋晴が家を出る前にそう言った。



『提案って?』

『お前の学校は、二年生から選択科目で海外留学があったよな?』

『ええ、確かにあるわね。ホームステイしながら希望した国の学校に半年程通う、だったと思うわ』



入学の際の受けていた説明を思い出しながらそう言うと、秋晴は『そうだよな』と頷く。



『実はお前の母さん………雫がアメリカで事業を展開しているだろう。それとは別に、俺の方も暫くそちらに赴任する事になりそうなんだ』

『そうなの……』



また、暫くは会えないのか。しかも海外だなんて、そうそうこちらから会いに行ける場所でもない。それに気持ちが沈んでいくのを感じていると、秋晴は更に言葉を続けた。



『それでなんだが、涙子。良ければお前も…………来ないか?』



え、と驚きに秋晴を見た。



『半年しかないが、それが終わる頃には俺も帰国するだろうし、帰ってからはなるべく家に帰れるように仕事形態を変えられると思うんだ』



どうだろうか?

そう少しだけ不安を露わに問われた言葉。涙子は正直複雑な気持ちだった。海外で暮らすと言う事は、その間は幼馴染み達や学校の友人には会えなくなるのだ。しかし、折角の家族揃って過ごせるチャンスでもある。

涙子は悩んだ末、こう答えた。



『少しだけ、考えさせて』

『まぁ、友人関係もあるしな。直ぐ答えを聞こうとはしないさ。まだ時間はあるから、ゆっくりと考えてくれ』



そう秋晴は笑うと、涙子に見送られながら仕事へと向かって行った。



──
───
────




(私の、答えは………………)



大体の答えは、既にもう固まっている。だけど踏み出すには、少しだけ早い。



(焦らないで良い。まだ時間はあるのだから…………それに)



「どっちにしても、やる事はしっかりやってからじゃないと……ね!」



ここではない、異世界にいる友人達を放ってはおけないもの。



「まずはしっかりと気持ちを切り替えていかなくちゃ」



そう呟くと、涙子は新調した携帯電話を取り出し、どこかへと電話をかけ始めた。











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