A requiem to give to you
- A score that spells hope・後編(6/10) -



「それで、こんな夜更けに何で僕たちはピクニックみたいな事をしているんだ?」



全員がシートに座っての開口一番はヒースだった。その言葉にタリス以外の全員が同じ気持ちで彼女を見ると、タリスはにっこりと手を合わせて笑った。



「だって、久し振りに夜ゆっくり出来るのよ? お泊まり会……とは違うけど、せっかく天気も良いのだし星見をするのも悪くはないかなって思って」

「星……?」



そう言ってルークが空を見上げる。それに倣うようにしてレジウィーダ達も顔を上げると……月はあるものの、そこには負けないくらいに輝く星の数々が浮かんでいた。



「すっ………げー………」

「大きな街とは思えないくらいよく見えるな」



感嘆とするルークにヒースも驚いたように言う。

確かに、とレジウィーダも思った。大体、このようにはっきりとした星空は田舎とかみたいな自然豊かで、街の明かりが届かないような場所でしか見られない事が多い。

しかし、つい最近レジウィーダはダアトでもこのような空を見ていた………気がする。あの場所も決して大自然に囲まれたような場所ではなかったが、それでもやはりとても綺麗であったのを何となく覚えている。



(あの時、一緒にいた”あの子”が夢でないのなら………やっぱり、)



「星見、か。……そう言や、向こうでは毎年お前の婆さんとこの田舎で皆で泊まりに行く度に夜、見に行ってたな」



グレイが思い出すようにヒースに向かってそう言うと、彼も少しだけ懐かしそうに目を細めて頷いた。



「そう言えば、そうだったな」



この世界に来て二年。体の時は止まっていても、その目で見聞きした記憶がある分、既に懐かしく感じるのだろう。

そんな二人にルークも地球での話が気になるのか、口を開いた。



「元の世界でも、やっぱりいつも四人でいたのか?」

「流石にいつも、って訳じゃないよ」



レジウィーダは思考を振り払うとルークの質問に答えた。



「そもそも今は通ってる学校もそれぞれ違うしねー。そこの男子二人は同じ場所だったけど、でもクラスも違うよね?」

「まあね」

「学校、か。楽しいのか?」

「全然」



それに即答したのはグレイだった。



「やる事多いし、決まりも多いし、周りも煩ェし………何より一日の半分以上を勉強に費やすって面倒臭ェ」

「一日の半分以上を勉強………」



想像してしまったのか、あからさまにルークは嫌そうな顔をした。それにタリスが小さく笑いながら口を開いた。



「でも、その勉強があるからこそ、私達は社会に出る為の事を身につけていくのよ」

「理不尽な事も多いって言うのは確かだけど、最低限の基礎を学ぶ事はやっぱり怠ってはいけないからね。それに、世の中には学びたくても学べない人も多い中、僕達は義務として教育を受けられるって言うのは恵まれているんだと思う」

「そう言うものなのか?」

「そうだよ」



頷くヒースに、レジウィーダはニヤリと笑った。



「因みに本心は?」

「勉強なんて糞くれぇだ」



キッパリと言い切ったヒースにルークは拍子抜けしたように肩を落とした。



「嫌なんじゃねぇか!」

「だって面倒臭い」

「グレイと同じ事言ってるし!」



そんなルークのツッコミにヒースとグレイは顔を見合わせると声を揃えて「当たり前だろ」と言った。



「ルーク、君ならこの気持ちがわかるだろ?」

「嬉しくないくらいにな!」

「じゃあ、問題ねーだろ」

「でもなんか釈然としぬぇ……」

「仕方ないよ、ルー君」



ポン、とレジウィーダはルークの肩に手を置く。それからサムズアップをしながらウインクをした。



「だって遊びたい盛りだもん☆」



その言葉に他のうんうんと三人も強く頷く。それからゴロンとシートの上に寝転ぶと再び星を見上げた。



「それにしても皆で星を見るのも本当に久し振りだなー」

「そうねぇ」



そう言ってタリスも隣りで同じようにする。それにどこか戸惑ったようなルークにヒースも仕方ないと言いたげに彼の背を軽く押した。



「折角ここまで用意してくれたんだ。今夜くらいは良いんじゃない?」



だから、ルークもやって。

ヒースに促されてルークもレジウィーダ達と頭が向かい合うようにして寝転び、ミュウもルークのお腹の上で同じようにする。それからヒースがその隣に寝転んで、グレイを見た。



「お前も、早く」

「えー…………」



あからさまに嫌そうにするグレイにレジウィーダがスッと起き上がるとシートに放り投げていた鞄から何かを取り出した。



「ほい、コレ」

「何だこれは……」

「何って……………どう見ても枕だよ」



そう、今彼に渡したのは真新しい枕だった。



「寝心地が良いらしいから、買ったばかりの未使用だけど特別にアンタに使わせてあげる」

「いや、寝心地の問題じゃねーンだけど」

「良いからさ


























つべこべ言わずに右へ倣えじゃあっ!」

「うぶっ!?」



ボフッ、と柔らかそうな衝撃と共にグレイを無理矢理枕と共にシートの上に沈めた。直ぐにでも起き上がってくると思いきや、時間をかけて枕に沈んだ顔を横に反らすと、



「めっちゃ柔らかっ」



意外にもお気に召したらしく、グレイはそのまま仰向けになった。そんな彼にレジウィーダは満足げに頷いた。
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