A requiem to give to you
- A score that spells hope・前編(3/7) -



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ざっくりと話を聞き終えたルーク達の間には暫しの沈黙が走る。

そして絞り出すようにヒースが頭を抱えながら口を開いた。



「なんて言うか………よく、無事だったな」



ワンチャン、アッシュ諸共死んでたんじゃないか?

そう突っ込んだ彼に他の仲間達もうんうんと頷く。それにレジウィーダは少しだけ申し訳なさそうに笑った後、気持ちを切り替えるように手を叩いた。



「まぁ、でも実際ちょっと三号機に穴が空いたけど誰も怪我しなかったし! 細かい事は気にしないってことで♪」

「何も細かくないから。てか、創生歴時代の貴重な浮遊機関に何してくれてんだよ」

「うひひひ……ごへぇん(ごめーん)」



ヒースに両方の頬を引っ張られるレジウィーダにタリスが堪らず声を上げて笑った。



「あはは……もう、相変わらずなんだから。───でも」



一度言葉を止めて、タリスはレジウィーダを向いた。



「それでこそレジウィーダだわ。……おかえりなさい」

「タリス………」



ヒースから解放されたレジウィーダもタリスを向き、そしていつものような明るい笑顔を返した。



「ただいま!」



あ、でも……、とレジウィーダは続ける。



「正直言うとね、まだ自分の中で色々と整理がついてない所も多いんだ。家の事情も絡んでくるから、ちょっと詳しくは話せないんだけどさ…………でも一つだけハッキリとしたのは、あたしは…………これから先も皆と一緒の時間を過ごしたいって思ったんだ」

「レジウィーダ……!」

「タリスもヒースも……そして皆にも、迷惑かけてごめんね。だけど、あたしなりに答えを見つけるから………また一緒にいさせて下さい!」



勢い良く頭を下げるレジウィーダに全員を顔を見合わせる。それから全員が苦笑を浮かべた。

それにレジウィーダが顔を上げると、



「何を言ってるんだよ」



と、ルークが笑った。



「だって俺達、仲間じゃないか」

「そうそう! 今更ダメだなんて言わないって。て言うか、レジウィーダがいなかったら誰がこのパーティを盛り上げるんだっちゅーの」



アニスもそう言って肩を竦める。それにガイやナタリア、そしてティアも頷いた。



「ただでさえアクが強いメンツばかりだからなぁ。ハラハラもさせられるけど、こっちも純粋に楽しませてもらってる部分もあるし……これからも頼むよ」

「迷惑だなんて思いませんわ。寧ろ、今はわたくしの方が迷惑ばかりかけてしまって申し訳がありませんもの………それこそ、直ぐにはどうにも出来ない歯痒さもありますが、貴女の勇気を、元気を、わたくしにも分けて下さいませね」

「そうね。やっぱり、何だかんだでこのメンバーでいる事が当たり前になってるんだもの。今更いなくなるだなんて言われたら悲しいわ。兄さんの事とか、戦争の事とかを抜きにしても、ここまで苦楽を共にしているのだから……嫌だと言っても、最後まで付き合ってもらうわ」



三人の言葉の後に、ジェイドも眼鏡のブリッジを押し上げながら言葉を紡いだ。



「皆さん青春ですねぇ………ですが、漸くいつもの元気が見られそうで安心しました」

「ジェイド君」

「貴女はやっぱり無茶苦茶やらかす方がらしいですよ…………こっちに被害が及ばなければ、ですけど」

「やっぱり一言余計だよね、君」



思わず突っ込むレジウィーダにジェイドは飄々と聞き流した。そんな彼を横目にタリス、そしてヒースも口を開く。



「悩みのない人間なんていないわ。どんなに相手を信用していても、大切だったとしても………誰にだって、どうしても言えない事だってある」

「タリスも、僕も……そして、グレイもね」



そう言ってヒースがグレイを見れば、彼は黙って目を閉じる。肯定も否定もしなかったが、それでもヒースはレジウィーダを再度向いて続けた。



「別に無理に聞こうとかは思わないよ。でも、もし君が………本当に話したいって思ったり、助けてほしいと感じた時は、その時は遠慮なく言ってほしい」



その代わり、



「皆が困った時は、ちゃんと助けてくれよ?」



その言葉にレジウィーダは一瞬だけぽかんとしたが、直ぐにその表情をくしゃりとさせると頷いた。



「抜かりないなぁ………でも、わかった」



その時は是非よろしくね。

レジウィーダがそう言って笑うのを見て、漸く一同に安堵の息が漏れたのだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







イニスタ湿原に入ってから二週間ほどが経ち、レジウィーダ達は湿原を越えた先にある音機関都市と呼ばれるベルケンドへと到着した。



「な、何とかここまで来れた………」

「もう、湿気と泥と砂と埃と魔物の何かよくわかんない液体でぐちゃぐちゃだよぉー!」



早く洗い流したいぃぃ!

そんなアニスの言葉に女性陣を始め、仲間達は満場一致で同意した。

流石に世界最大の湿原は一筋縄ではいかず、乗り物系が使えない現状徒歩で渡る事を余儀なくされ、物凄い時間がかかってしまった。

そんな環境下だからか、湿原ではキムラスカや神託の盾からの追手は一切なく、警戒すべきは目の前に現れる魔物だけだったのは幸いだった。途中でとんでもない湿原の主のような化け物もいたが、無駄な体力や道具の消費を抑える為にも何とか戦闘にならないよう進むのには骨が折れる思いだったのはここだけの話だ。
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