The symphony of black wind
- 漣と自鳴琴(3/5) -


――――
―――
――



ドンッ



『きゃっ!?』

『わっ!?』






ガシャンッ






『あぁっ! ワインが!?』

『あ、ごめんなさい!』



コレットは目の前にいる茶色髪を逆立てた男に謝った。リフィルの『シルヴァラントの(以下略)』が終わり、漸く教会へと向かおうとしたミライ達。コレットは教会の祭司とは顔馴染みだったらしく、久し振りに会えると彼らに話しながら歩いていた。しかしそのせいで周りをよく見ていなかった。角の所で丁度鉢合わせた別の一行のリーダー的男とコレットがぶつかってしまったのだ。それにより男の持っていたワインは堅い地面に落ちて割れてしまったのだった。

男は額に青筋を浮かべながら口を開いた。



『ごめんなさいだぁ? おいおい、嬢ちゃん。ごめんで済むと……』



その時、べレットを被った魔術師風の女性が男を止めた。



『やめな。いつまでもここに留まる訳にはいかないんだよ』

『チッ』

『あの、駄目にしたワインは弁償しますから!』



コレットは両手を組んで男にそう言った。男はそれに「じゃあ急いで持って来いよ」と鼻を鳴らしながら返し、近くの宿屋へと入っていった。ロイド達はそんな男の態度が気に食わないと言った感じだったが、既に行ってしまったコレットを追いかける事にした。

…………が、しかし



『あれ?』



旅の資金を確認していたミライが不思議そうに声を上げた。



『どうした?』



クラトスが問うと、彼は資金の入っていた袋を皆に見せ



『金、まったくねーぞ?』



と言った。



『『『狽ヲぇぇぇえええぇえええぇぇっ!?』』』



確かに袋の中には1Gも入っていなかった。それに一部を除いた全員が素っ頓狂な声を上げた。



『ど、どう言う事なの!? 確か街に来た時まではそれなりにあった筈よ!!』



リフィルがミライに詰め寄る。彼は「俺だって知らねーよ!」と返した。クラトスが溜め息を吐きながら皆を見た。



『最後に金を使ったのは誰だ?』

『ボクは使ってないよ!』

『わたしも使っていません』



彼の問いにコレットとジーニアスが首を振って答えた。



『俺はグミやボトルを買うのに使ったけど、それでもまだ残ってたぜ?』

『私もスペクタクルズを補充する為に数個買っただけだわ』



ミライとリフィルも違う。すると残るのは……………と、全員がロイドを向いた。気のせいか、彼の持っている食料袋が異常な大きさに膨れ上がっているように見えた。



『……ロイド、お前だな』



ミライがロイドの肩に手を置きながらそう言うと、彼はギクリと肩を揺らした。その顔からはダラダラと冷や汗が流れていた。



『そのー……どれも美味そうだったから、つい』



あははーと空笑いをするロイドにミライの拳骨とリフィルの蹴り、そしてクラトスの鉄槌が下ったのだった。



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