The symphony of black wind
- 火の神殿(7/10) -



(俺、このままどうなるんだろう……)



一生、何も感じぬまま永遠とこの空間を彷徨するのだろうか?



(まあ、それも仕方ない……よな)



そう、全てを諦めかけたその時、ある一冊の本についた時計がすごい勢いでグルグルと回っているのが目についた。



(………………?)



力なくそれを見ていると、時計はピタリと止まり、ゆっくりと開いた。



(何だ……!?)



開いた本から巨大な光る手のようなモノが伸びた。それが未来の身体に巻き付く様に捕らえると声を発した。



『───…見つけた!!』



直後、急激に何かが身体に流れ込むのを感じ、彼の視界は真っ白になった。



――
―――
――――






「……………!!」



ハッとして目が覚める。しかし覚醒した先もまた、現実ではなかった。

足はつく。感覚もある。心臓もちゃんと動いている。ただ少し体が熱いだけで、これと言った異常はない。確かに彼は生きて存在していた。だがここにアリアはおらず、それ以前にこの場所は先程までコレットが儀式を終わらせた祭壇ですらない。構造は何となく似ているような気はするが、今まで遺跡内の全ての部屋を見てきた中でこのような部屋はなかった筈だ。



(いや、それよりも……)




ミライはそれについて考えるのは一旦隅置き、先程見たモノについて考え出した。



(さっきの、夢か? ……いや、違うな。さっきのは……多分)



俺の過去だ。それも、死んだ直後……もしくは"この世界"に来る直前の、と言うべきか。全て思い出してはいないと思ったが、やはりまだいくつか抜けている部分があるようだ。



「まぁ、だからこそ探しているんだけどな……












あの最後に聞いた声の正体を」



声の正体と神殿や精霊が何の関係があるのかは自分でもわからなかった。でも何故か、そこに何かあるような気がしてならなかった。勘、だが。しかしその勘も、どうやら正解のようだった。思い出した今だからわかるが、イフリートのマナに触れた時流れてきたマナはあの時に光から流れてきたエネルギーと全く同じだった。……否、正確には一部なのだが。何の目的でこんな事をしたのかはわからないが、少なくともミライがこの世界で生きて存在出来るのは、あのマナのお陰だと言う事だけはわかった。

だが、一つだけ疑問が残る。



「何で今更またマナを足す必要が……?」



体内のマナが減ったから……ではないだろう。記憶が戻った時に、まるで今まで封じ込めていたモノが解放されたかのように一気にマナ(と言っても殆どが闇属性だったが)が増えたのだから。

……では何故?












『それは足りなかったからだ』



重く響いた声と共にミライの目の前はに真っ赤な体をしたランプの魔神のようなモノが現れた。それに驚きつつも本の挿絵で見た火の精霊と酷似するその姿に「イフリートか」と問うと、それは確かに首を縦に振った。



『いかにも。我はイフリート』



イフリートはミライの言葉に頷きながら、威厳に満ちた態度を崩さずに答えた。


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