The symphony of black wind
- 火の神殿(6/10) -


それからコレットは再生の儀式によって天使の力を得た。それにより彼女の背からは綺麗な、天使と言うよりは妖精のようなビンク色の羽が現れた。

儀式が終わり、レミエルが消えた後、名残惜しそうにするリフィルを引いてジーニアスがワープ装置に乗って先に出た。その後にクラトス、コレット、ロイド、アリアと続き、残ったミライはワープ装置に乗らず祭壇に近寄った。

壇上には赤い光……恐らくイフリートのモノと思われるマナが浮かんでいる以外は何もなかった。



「ここにもない、か……」

「何がないんですか?」



背後からの声に驚いて振り向くと先に言った筈のアリアが立っていた。



「先に行ったんじゃなかったのか?」

「行ってませんよ。それにほら、わたしは本来ここの精霊を調べに来たので」



そう言いながらアリアは祭壇に近づき、光に触れてみた。しかし触ることは出来ず、すり抜けるだけだった。



「やはり精霊は見れなさそうですね、残念です。…………ですが」



アリアはミライを振り向き言った。



「あなたなら触れる事が出来るかも知れませんね」

「どう言うことだ?」

「何て言うか……あなたの身体から感じるマナの中にこれと同じモノを感じたので。もしかしたらと思って」



これ……とは言わずもが、イフリートのマナだ。まさかと思いつつミライはそっと手を伸ばしてそれに触れてみた。



「触れる……? ……!?」






トクン……










───………よ










「…………なっ!?」



突然触れていたマナが身体の中に流れ込むのを感じた。それと同時に頭の中に声が響いた。



「イフリー…ト? ………ぐっ!?」



身体が燃えるように熱くなり、苦しくなった。あまりの苦しさに膝をついて蹲った。



「ミライさん!?」



アリアもミライの異変に気付き、驚きの声を上げた。しかしミライはそれに答えることが出来ず、そのまま倒れた。それにアリアが何度も自身の名を叫ぶ声が遠退くのを感じながら、彼はゆっくりと目を閉じた。






────
───
──






トクン



トクン



鼓動の音が耳に響く。



(生きてる、のか……?)



目を開け、血が流れ続けている箇所に触れた。だけど感覚が全くない。血の感触も、痛みも感じない。それどころか、手が体をすり抜けてしまって触れる事ができなかった。

それはまるで……



(幽霊みたい、だな)



もしかしたら実際にそうなのかも知れない。自分はさっき死んだ。だから体なんてないのだろう。その証拠に、何故か心音はするが、心臓自体が動いている気配がなかったのだから。

死んだら天国やら地獄へやら逝くと言われている。だが自分のいる場所は、明らかにこの世でもあの世でも……況してやその狭間でもない場所だった。地面などない。上も下も、横も斜めもない。完璧な四次元空間だ。そんな空間に、未来は無数にある表紙に時計がついた本と一緒に浮遊していた。



("時空の狭間"……)



その名の通り、過去と未来【時間】、場所……世界【空間】を繋ぐ道。何故こんな言葉が浮かんだのかは知らない。だが、何故かそう思ったのだ。昔からSF物は好きだったが、ついに頭までイってしまったのだろうか。



(いや、それはないか)



先程、今のこの状況よりも信じ難い事を経験したばかりなのだ。それはない筈だ。多分。


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