The symphony of black wind
- 火の神殿(5/10) -



「いっててて……」

「今治すわ。癒しの光よ……ファーストエイド!」



リフィルの放った癒しの光が、ジーニアスの傷をみるみると治していった。その様子を見ながらミライが口を開いた。



「なら、詠唱時間があれば何とかなるか?」



雨のように沢山の矢をクトゥグハに放ちながら訊く。



「リフィルは回復系しか使えない。俺は闇魔法、アリアは譜術のみで奴にまともなダメージは与えられないし、クラトスも水や氷は使えない」



そう言いながらクラトスを振り向くと頷くのが見えた。



「詠唱時間は俺達で稼ぐ。様々な理を使い分けられるお前だから、一発頼みたいんだ」



出来るか、ともう一度訊くと、ジーニアスは再度うーんと唸った後、「やってみるよ」と頷いて詠唱に入った。それと同時にジーニアスを除く全員が駆け出した。ロイドとクラトスが左右からクトゥグハに斬りかかり、後ろに回ったコレットがチャクラムを投げる。そこから更にミライが正面から休みなしに弓を射続ける。それによりクトゥグハの標的がジーニアスから完全に外れた隙に、アリアが手を組んで旋律を紡ぎ出した。



「深淵へと誘う旋律……」











トゥエ レイ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ











部屋一杯に響くその声が止んだ時、クトゥグハの動きも鈍くなった。そこにジーニアスの声が飛ぶ。



「出来た! 皆離れて!!」



大きな剣玉の玉を先端の剣に刺し、高く掲げて力を解放した。



「凍っちゃえ! アイシクル!!」



クトゥグハの下から先の鋭い氷が現れ、突き刺した。



「グガァァァッ!!」



そのままクトゥグハは悲鳴を上げながら光となって消えた。一瞬の静寂の後、嬉しそうなロイドの声が響き渡った。



「やったな! ジーニアス!」

「初めて試したけど、良かったぁ」



嬉しそうに背中を叩くロイドにジーニアスは安堵しながら苦笑した。リフィルやミライ、アリアも同様に頷いた。



「威力もあってかなり良かったわよ」

「そうだな。良く頑張ったよ」

「お疲れさまです」

「あ、ありがとう。えへへ」



ジーニアスは誉められた事に照れたように笑い、ついでコレットを見ると祭壇に促した。



「あ、ほらコレット。封印を解放してよ」

「うん」



コレットは頷き、祭壇で祈りを捧げた。すると祭壇の上が光出し、そこから緑色の法衣を纏った白い羽の天使が現れた。その神秘的な姿に、初めて目にするミライは感嘆の声を上げた。



「あれが天使……」

「あの人、レミエルって言ってコレットのお父さんなんだよ」



儀式の様子を見ながらジーニアスがこっそりと言った。



「へェ……果てしなく似てないな」



ミライはレミエルの顔を見ながらきっぱりと言った。ジーニアスは思わずガックリと肩を落とした。



「そんなハッキリと……」

「だってよ。コレットの親父さんにしちゃあ、あの顔は陰険すぎだし………何より変態っぽい」

「そこ、煩くてよ」



リフィルの杖が容赦なくミライの顔面に炸裂した。そのままひっくり返ったミライは痛む鼻を押さえながら起き上がりレミエルを見ると顔が引きつっており、額に青筋が立っていた。



「あ、構わず続けて下さいっス」



流石に空気が重くなってきたので先を促した。


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