The symphony of black wind- 火の神殿(4/10) -
その時コレットの背後辺りから魔物の気配を感じた。
「コレット、伏せてろ!!」
叫ぶと同時にミライは腰にあった弓を構え、背中から矢を取り出して放った。
「いけっ!」
ドスッと矢が命中し、普通の魔物と違いマナだけで構成されていたらしい魔物の体は光に還って消えた。直ぐ様ロイドがコレットに駆けつけた。
「コレット、大丈夫か!?」
「うん、大丈夫。あ、ミライもありがとう」
「いやいや。でももう少し周りを注意しないと駄目だぞ」
わかったかい、と注意するとコレットは「気をつけます」と苦笑した。その時急に弓に重みを感じ、驚いて振り向けばリフィルが掴んでいた。
「……リフィル?」
「これは戦闘用の弓ね」
そう言って弓から手を離した。そしてジーニアスがあっと声を上げた。
「そう言えばミライ、その弓どうしたの?」
「最初にトリエットに行った時にカスタマイズしてもらったんだよ」
お前らが捕まったお陰で取りに行くのが遅くなったけど、と言うと約二名程バツの悪そうな顔をした。
「でもそこのおっちゃんかなり良い腕してるぜ。あんなボロ弓がこんなに使いやすくてピッカピカになるんだからな」
前より幾分大きくなったが、とても軽くてあまり邪魔にならない。本当に良い腕をしている、と今も頑張って商売に励んでいるであろうおっちゃんにミライは心の中で感謝した。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
仕掛けなどを解きながら暫く進んで行くと、ワープ装置に行き当たった。ミライはワープ装置をジッと見詰めると考え込んだ。
(この間のディザイアンの基地もそうだったけど、この世界の物にしてはやけに近代的と言うか、何と言うか……)
正直に言えば、異質なのだ。この部分だけが。そんな事を考えていると、子供達の声が耳に入ってきた。
「この先かな?」
「そのようですね。この先から、強いマナを感じます」
「アリアはマナにも敏感なんだな」
「そうみたいですね」
微笑みながら彼女が頷くとロイドとコレットとジーニアスは好奇に目を輝かせた。
「行くぞ」
クラトスはそんな三人に構わずワープ装置に乗って先へ行ってしまった。ミライとリフィルも後に続き、残された四人は慌ててそれを追いかける。
そして……
「これは……」
ワープした先にあったのは祭壇のある部屋だった。その部屋は一段とマナの密度が濃く、ジーニアスとリフィルの顔が僅かに強張った。
「すごいマナだ……」
ジーニアス言葉にミライとクラトスはいつでも攻撃できる態勢で頷いた。それにロイドも剣の柄に手を当てながら言った。
「何か潜んでたりしてな」
「そのようです」
アリアが術の構えを取りながら祭壇に向かって言った。全員がそちらに目をやれば、祭壇からはこの場を支配するマナよりも更に濃いマナが噴出されていた。
「来ます!」
コレットが叫ぶと同時に祭壇が爆発し、中から紅い巨大な豹のような魔物が現れた。
「クトゥグハ……"火の封印"の守護者【ガーディアン】か」
「え、これがイフリートじゃないのかよ!?」
クラトスの言葉にロイドがどういう事だと言いたげな表情で返した。ミライは前にとある町の図書館で見た本の事を思い出した。
「書物によると確かイフリートって、ランプの魔神みたいな姿だった気がするな」
「らんぷのまじん?」
「二人とも! 呑気に話してないでさっさと倒そうよ!!」
緊張感のないミライとコレットにジーニアスのツッコミが入る。その時クトゥグハが二人に向かって飛び掛ってきた。二人はそれをかわし、弓とチャクラムで反撃した。しかしそれは難なく避けられてしまう。
「いけっ、アクアエッジ!!」
「仇なす者に聖なる刻印を与えよ……エクレールラルム!!」
ジーニアスとアリアも術で援護するが、クトゥグハには殆ど効いていないみたいだった。
「そんな! 水系魔法が効かないなんて……」
「水では蒸発してしまうみたいですね。では、これなら!」
アリアは譜術によってアイシクルレインを放つ。だが……
「弾いてるよ!?」
「これは、困りましたね……」
流石はマナの精霊を護る守護者だ。アリア曰く「マナをバラしたエネルギー」である音素では、マナの塊とも言えるあの生き物には効果がないらしい。
「どうする?」
ミライの言葉にアリアはポンと手を叩いた。
「ジーニアスさんの氷の魔術ではどうでしょう?」
それにジーニアスはうーんと唸った。
「でもまで上手く出来るか……。それに詠唱時間だっ「ジーニアス、前!!」
クトゥグハの放った魔法がジーニアスに向かって飛んできた。ロイドの言葉に彼は間一髪で何とかかわしたが、少し火傷したようだった。
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