The symphony of black wind
- 闇のマナ使い(6/6) -



「ねぇ、ミライ」

「ん?」

「貴方は………「人間だよ」



何となく彼女の言わんとしている事を理解し、先に言う。

自分は人間だ。いくら突然体内のマナが増えようとも、それは揺るぎない事実なのだ。



「それにエルフの血が入っていればリフィルやジーニアスなら直ぐに気付くんだろ?」

「はぁ……」



そう言うと何故か再び溜め息を吐かれてしまった。本当になんでだ。



「あのね、ミライ。私達エルフやハーフエルフが同族を見分けられるのは血ではないのよ」

「あれ……?」

「まぁ、これは人間には知る必要のない事だから敢えて学校でも教えてこなかったけれど……エルフやハーフエルフと言うのは人間にはない、マナをコントロールする力があるの」



それは知っている。だからこそ、リフィルやジーニアスは魔術が使えるのだ。その意味合いを含めて頷くと、続きを促した。



「そのマナで魔術を行う為には常に多くのマナを体内に貯めておく必要がある。エルフやハーフエルフ。特にハーフエルフはその容量が人間の凡そ数百倍と言われているわ」

「成る程な。つまり人間が魔術を使えないのは、そのマナを貯蓄出来るキャパが少ないからって事なんだな」



その通りよ、とリフィルは頷く。だから本来なら使えない筈の魔術が使えるミライに疑問を持ったのだろう。そしてエルフやハーフエルフが同族を見分けられる理由。それはその身体に流れる膨大なマナを感じる事が出来るから、と言う事らしかった。

そこでミライはん?となった。



「あれ? でもあのクラトスって奴は魔術が使えるって聞いたんだけど」



実際に使っているところを見た事はないが。



「って、事はアイツもエルフの血が入っているのか?」

「かも知れないわね。でもエルフやハーフエルフ程のマナは感じないから、恐らくクウォーターとかではないかしら」



ふーん、とあまり興味なさげに返す。自分から話を振っておいてアレだが、別に彼が何であろうとこれから共に旅する仲間なのだ。さして問題がある訳でもない。



「それよりミライ」

「何?」



リフィルに呼ばれ、彼女を見れば今度はどこか心配するような、そんな顔をしていた。



「何か不調とかあったら、直ぐに私に言いなさい」

「な、なんだよ急に……」



らしくない、と言うと頭を叩かれた。



「仲間を心配するのは当たり前です。それに今の貴方はマナがとても不安定だわ。もしも暴走なんてしたら……取り返しが付かなくなるなんて事もあるのよ。だから良い事? 絶対に少しでも気分が悪くなったりしたら直ぐに言うのよ」

「わ、わかった! わかったって! だからこれ以上近付いてこないでくれって」



マジで後ろのオアシスに落ちるから、と言うとリフィルはミライの背後にある物に気付き、慌てて離れた。



「……とにかく、よろしい?」

「だからわかったって……」

「返事は"はい"でしょう」

「…………はぃ」



お前は俺の母親か、と内心不貞臭れるミライを余所にリフィルは満足そうに頷くと「よろしい」と言って踵を返した。その背中を見て、ポツリと呟く。



「仲間、ね」

「何をしているの。早く戻るわよ」

「はいはい、わかってますよ。センセッ」



どこまでも生真面目な様子なリフィルにミライは肩を竦めると、旅の仲間の待つ宿へと足を進めた。












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