The symphony of black wind- 闇のマナ使い(5/6) -
「ジーニアスから事情は聞いているわ。弟が迷惑をかけたようね」
その言葉にロイドは首を振った。
「そんな事ないよ。寧ろ、ジーニアスには本当に助けられたんだ。今だって、こうして先生達と一緒に来てくれたしさ!」
「ロイド……」
ありがとう、とジーニアスが小さく呟いたのはロイドまでは聞こえなかったが、ミライにはしっかりと届き、その銀色の頭をポンポンと軽く叩いた。そこで今まで黙って辺りを警戒していたクラトスが口を開いた。
「そろそろ此処を出よう。いつまた敵が現れるかわからない所に留まるのは良くない」
「そうだな。ロイド、リフィル。話は一旦トリエットに戻ってからにしよう」
クラトスの意見に同意しつつミライが言うと二人は頷き、急いでディザイアンの基地を脱出した。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
あれから一行がトリエットに戻ってきたのは日も大分暮れてからだった。クラトスが宿で部屋を借り、一息もそこそこに全員で今までの経緯や、これからロイド、ミライ、ジーニアスが旅に同行する事、そしてこれからの行き先を話し合った。
そして今日は解散となり、各々が部屋で休む中、ミライはトリエットの中心にあるオアシスに来ていた。
「砂漠の夜ってのは本当に冷えるな」
仕事の関係で何度か砂漠を来た事はあるが、夜を過ごした事はない。話にはよく聞いたが、ここまで気温差が出るものなのか、とミライは軽く身震いをすると苦笑した。
「ま、昼間の暑さよりはマシか」
「暑さが苦手な貴方からすれば、そうでしょうね」
……………。
「あのですね、お願いだから気配なく背後にピッタリくっ付いて来て突然喋り出すのは止めてくれませんかね?」
ものすごく怖いのですが、と頬を掻くと後ろにいた人物……リフィルは数歩下がって溜め息吐いた。正直、溜め息を吐きたいのはこっちだとミライは思わずにはいられなかった。
「それで、どうしたんだ?」
「それはこちらの台詞です。こんな時間に外を彷徨いて……明日も早いのだから、早く宿に戻って休みなさい」
取り敢えず訳を聞くとそう返ってきた。その子供扱いな対応にミライはムッとした。
「これでももうすぐ21になるんだけど」
「21だろうと31だろうと、私から見ればまだまだ子供だわ」
「……そりゃ、リフィルは老けてm」
「何か言ったかしら?」
ガッと光の早さで胸倉を掴まれてうっとなる。次いで聞こえてきた地を這うような恐ろしい声に思わず何度も首を横に振った。
「まったく……そう言うところが子供だというのよ」
「…………」
何かを言い返したかったが、生憎と彼女の方がミライの何倍も頭の回転が速い。言えば確実にメタメタに言い負かされるだろうと思い沈黙する。
するといきなりリフィルは話題を変えた。
「そう言えばミライ。貴方、魔法が使えるようになったのね」
「ん? あぁ、まぁ……つい最近からだけど」
ロイドの時と同じようにそう返すと彼女は難しい顔をした。
「最近……? 何かしたの?」
「いや、何もしてない……筈なんだけどなぁ」
そう、何もしていないのだ。だけど何故だか最近はよく色んな事が起こる。昔の記憶を思い出したりとか、魔法を使えるようになったりとか。しかしミライは己の記憶の事はまだ誰にも話してはいなかった。
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