The symphony of black wind- 闇のマナ使い(4/6) -
それにリーダーは男を振り返った。
「拙い……神子には"奴"がついている。今はまだ見つかる訳にはいかん。……──ボータ!」
「お任せ下さい。奴らの相手は私めが努めましょう」
一礼をするボータにリーダーの男は頷き「任せたぞ」と言うと、今度はロイドを向いた。
「まさかお前がロイドだったとはな」
「だから何だよ」
「ロイド・アーヴィング。次は貴様を我が物とする」
「はぁ!?」
突然に投下された爆弾発言にロイドは素っ頓狂な声を上げて数歩下がる。それをリーダーの男は気にする事なく踵を返すと、ボータの入ってきた扉から部屋を後にした。
「…………?」
気のせいか、男が出て行く直前にこちらを見たような気がして、ミライは不思議そうに首を傾げた。
(なんだ……?)
「ミライ!!」
思考に耽っていると、まだそれ程日にちは経っていないものの懐かしく感じる叱責が飛んできた。
「リフィル?」
「ボーっとしていては首がなくなるわよ」
「その通りだ小僧!!」
リフィルの声を遮るように放たれたボータのその言葉と共に巨大な曲刀が振り下ろされる。ミライはそれをバックステップで避けると、辺りを見渡す。そこでは先程別れたばかりのジーニアスが剣玉をつきながら詠唱を唱え、コレットがチャクラムを放ち、ロイドとクラトスが剣を手にボータに向かって行った。
「てやあっ!!」
足の速いロイドが先に辿り着き、背中ががら空きなボータに虎牙破斬を繰り出す。それをボータは振り向き様に曲刀で薙ぎ払い、ロイドをふき飛ばす。
「うわっ!?」
「喰らえ、岩砕陣!!」
ボータは曲刀を力強く地面に突き刺した。するとそこに陣が浮かび、岩石が飛び出しロイドに襲いかかった。
「くっ」
「粋護陣!」
ロイドの前にクラトスが滑り込み、護身術を張って岩石から身を守った。
「無事か?」
「クラトス、助かった!」
クラトスに礼を言うと、ロイドは直ぐ様立ち上がり再びボータ目掛けて走り出した。
「そうはさせん!」
「ロイド、援護するよ! ──ウインドカッター!!」
詠唱が完了したジーニアスの術がボータの足を止める。そこからまた剣を地面に突き立てようとするのをコレットのチャクラムが防いだ。
「ぬぅ……っ!」
「まだまだ行くぜ! ──ダークスフィア!!」
完璧に動きを止めたボータにミライも追撃の魔法を放つ。闇の籠が相手を包み込み、これ以上の行動を制限した。
「行け、ロイド!!」
「おう!!」
ロイドは走りながら二本の剣を一度自分の方に引き、一気にボータに突き出す。
「行くぞっ……───瞬迅剣!!」
ガキンッと、鈍い音が響いた。
「…………くっ」
ボータの手から上半分がなくなった曲刀が滑り落ちる。ボータは苦渋に満ちた表情でロイド達を睨み付けると数歩後退した。
「やはり私では、荷が勝ち過ぎていたか……」
そう言い残すとボータはリーダーの男と同じ方へと走り去っていった。どうやら、こちらの勝ちらしい。それに全員から安堵の息が漏れる。
「? これは……」
リフィルは使い手のいなくなった折れた曲刀に近付き、そこに付いている石を手に取った。それにロイドは思い出したように声を上げた。
「リフィル先生!」
「ロイド……」
リフィルはハッとして石から視線を外してロイドを見れば、彼はどこか言い辛そうに視線を迷わせていた。それにリフィルは彼の言いたい事を理解し、苦笑した。
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