The symphony of black wind- 闇のマナ使い(3/6) -
ミライの魔法が放たれ、ディザイアン達が退けられる。その間をロイド達は一気に駆け抜けた。
「ミライ、アンタ魔法が使えたのか!?」
魔法では払いきれなかった向かい来る敵を剣で斬り払いながらロイドが言う。それにミライは敵から奪った例のボーガンを放ちながら答えた。
「つい最近出来るようになったんだ。理由はわからない。……ただ」
この魔法、使えば使う程……身体の奥底から力が溢れてくるんだ。
「うーん、よくわからねーけど、大丈夫なんだな?」
「それは俺が魔法を使う事によるデメリットについて言ってるのか?」
「デメリット?」
意味が分からずロイドは首を傾げる。ミライは頭が痛くなるのを堪えながら首を振った。
「あー、うん。まぁ、いいや。……とにかく目の前の敵に集中するぞ!」
キッと前方の敵を睨みつけ、ミライはボーガンを構えた。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
「……………で、ここはどこだ?」
しつこいまでのディザイアンからの追走を逃れる為、近くの扉に入った。それにより何とか撒く事は出来たのだが、どうやら誰かの私室に入り込んでしまったらしかった。それでミライのこの一言だった。
「出口……じゃないよな」
「ロイド、これが出口だったら俺は泣くに泣けないぞ」
「冗談だってば!」
疲れたように言うミライにロイドは慌ててそう返す。ミライはわかっているのか、態とらしく肩を竦めると壊れてしまったボーガンを床に捨てた。
その時、突然扉が開かれた。
「「!?」」
「何者だ!?」
部屋に入ってきたのは水色の長髪を一つに束ねた男だった。見た目こそ人間そのモノだが、ここがどこだかを考えれば、この男がこの基地のディザイアンを束ねる者【ハーフエルフ】だと直ぐに思い至った。
男は本来なら部屋にいる筈のないミライ達に驚き、直ぐ様雷の魔法を放ってきた。
「ロイド、避けろ!」
「うわっ!? ……ク〜ッ、てんっめぇ! 人の名を訪ねる前にまずは自分の名を名乗るのが筋ってモンだろ!!」
雷撃を避けながらロイドが男性に向かって怒鳴る。それに男性は一度目を見開くと、次いで笑い出した。
「ククッ、面白い奴だ。だが、生憎と貴様のような下賤な輩に名乗る名などない」
明らかに馬鹿にしたような言い方が癇に障ったのだろう。ロイドは顔を引き吊らせると、ヘェと半眼になった。
「悪いけどな、こっちもお前みたいな人を馬鹿にするような大バカ野郎に名乗るような名前はないんだ」
「っ、貴様ァ!!」
どうやら男の沸点はロイドよりも遙かに低いらしい。ロイドの言葉にキレ、魔法でも使ったのか一瞬で身の丈程の大きさはあるダブルセイバーを出現させた。それに二人も身を構えた時、再び扉が開かれ、誰かが入ってきた。
「リーダー!」
黒い髪を逆立てた尖り耳のハーフエルフの男が水色髪の男に近寄る。そしてどこか慌てた様子で自らがリーダーと呼んだ男に言った。
「神子達が来た模様です!」
「何だと!?」
リーダーの男は驚き、それから苦虫を噛み殺したような顔になると舌打ちをした。それと同時に聞き覚えのある声が部屋に響いた。
「ロイドー! ミライー!」
「「コレット!?」」
「二人とも、良かったぁ……!」
二人が驚くのを余所に、こちらに走ってきたコレットは嬉しそうに笑っていた。
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