A requiem to give to you- 城砦都市(9/13) -
「………ま、それは一先ず置いといてだ」
「置いとかないでーっ」
軽く流そうとするヒースにレジウィーダはカツラ……ウィッグを外しながら突っ込む。オレンジ色のそれを取った下からは黒に近い、くすんだ紅色が出てきた。それにやはりと言うべきか、若干名反応を示す者達がいた。
「君……それは地毛かい?」
「うん、地毛だよ」
どこか訝しげなガイの問いに頷きつつも、直ぐに彼の言いたい事がわかったレジウィーダは「でも」と続けた。
「元々この色って訳でもないんだ。だからキムラスカとは何の関係もないから」
「ほら、ガイ忘れたの。私達は……」
「あ、そうか。君達は……そう言えばそうだったな」
タリスの言葉にガイは彼女達が異世界の者だと言うのを思い出した。それから直ぐにバツが悪そうに謝った。
「疑ったりして悪かったよ」
「平気だよ。よく間違われるし、そもそもややこしい色にしてる方も方だからさ」
「……で、それでも染め直さない、と」
「えへへ」
照れるな、とヒースはレジウィーダの頭を軽く叩くと大きな溜め息を吐いた。そんなやり取りに一同から苦笑が漏れる(何名か話の意味をわかりかねている者もいたが)
そしてふと、タリスが思い出したように声を上げた。
「あ、ところでレジウィーダ」
「んー? どしたよ」
「貴女はこれからはどうするの?」
グレイのように神託の盾に残るのかしら、と問い掛けてくる彼女にレジウィーダは首を横に振った。
「ううん、残らないよ」
「それじゃあ……」
と、期待に満ちた目で見つめられ、今度は頷いた。
「皆が良ければ、あたしも一緒して良いかな。その旅」
「勿論よ。ねぇルーク?」
「な、何で俺に振るんだよ」
いきなり話を振られ些か驚きながらもルークはそう返した。
「最終的にはバチカルまで連れて行くし、貴方にちゃんと許可をした方が良いのかと思って」
「別に一々そんなのいらねぇっつーの! 大体、コイツってお前らがずっと探してた奴なんだろ。俺だって知らない訳じゃねぇし……だから、別に着いてきたって構わねぇよ」
「ルー君………うっしゃあありがとおおおおっ!!」
ルークの言葉に感動したレジウィーダはたまらず抱きついた。それに慣れていないルークは当然、顔を真っ赤にして慌て出す。
「わ、おま……急に抱きつくなっつーの!」
「あは、照れちゃって〜かーわいいの〜♪」
「いやぁ、モテモテですねぇ」
「ははは、こりゃ本当にナタリア姫が泣くな」
と、二人から少し離れた位置で笑い続けるジェイドとガイ。ルークはそんな二人に「笑ってないで何とかしろ!」と怒鳴った。それに今度は溜め息を吐くティアに抱えられていたミュウが動いた。
「ミュウもやりたいですの〜」
「だあああああっ! てめぇはもっと来んじゃぬぇ!!」
わいわいぎゃあぎゃあ、と騒ぐ二人と一匹を眺めながらタリスは嬉しそうに微笑む。そんな彼女にヒースが声を潜めて話し掛けた。
「タリス」
「ヒース………わかってるわ」
彼が気になるのはここにはいないもう一人の幼馴染み。イオンの事もあって外出は控えるとの事だが、二人にとっては寧ろチャンスなのだ。コレを逃す手はない、と二人は頷き合う。
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