A requiem to give to you
- 城砦都市(7/13) -


シンクの言葉にリグレットも頷いた。



「そうだな。一度タルタロスに戻って対策を立て直しましょう」

「あ、オレそれパスするわ」



突然のグレイのそんな言葉にシンクは素っ頓狂な声を上げた。



「はぁ!? いきなり何言ってるんだよ!」



まだ任務中なんだけど。



「ンな事はわかってるさ。けどアッシュもクリフのガキも私用でどっか行っちまったし、さっきもアリエッタが用事だっつって森に行って来たろ。ならオレだって良いじゃねーか」



そう言うとシンクは苦虫を噛み殺したように口元を歪めて黙り込む。それを見て何かを考えるように顎に手を当てていたラルゴがグレイに問い掛けた。



「何かあるのか?」

「あぁ、この街にあるソイルの樹があるだろ。それをちっと調べたくてねェ」

「また如何にもアンタに似合わなさそうな事を」



と、皮肉るシンクに「煩ェ」と返した時、若干影が薄くなっていたディストがここぞとばかりに出てきた。



「ハーッハッハッハッ! 私にはわかりましたよグレイ! 貴方はあのk」

「まぁ、とにかくだ。なかなかこの街には来る機会がなかったからな。見物も兼ねて調べたいンだよ。もしかしたら"帰り道"がわかるかも知れねーからな」

「! そうか……それなら許可をしよう」

「……オイ」



リグレットの許可にグレイは軽く笑って「サンキュ」と言うと街の奥へと行こうとした。それに慌ててフィリアムが駆け出す。



「あ、待って兄貴俺も……」

「ん? あぁ、オレ一人でも平気だよヘーキ」



ついて来ようとするフィリアムにそう言って静止をかけると、今度こそ街の奥へと消えていった。



「……………」

「ほら、フィリアム何やってるのさ」

「フィリアムも、タルタロスに戻ろう?」



呆然と立ち尽くすフィリアムにシンクとアリエッタが声を掛ける。それからどこか不安そうにしながらも二人と一緒に街を後にした。



「………って、だから私を無視するなあああああああああああっ!!」



結局、誰にも相手にされなかったディストの叫びだけが虚しく響いたのだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「……で、あのグレイとか言う六神将の補佐が残っちまった訳だけど」



どうするんだよ、と。取り敢えず一度ティア達と合流する為にレジウィーダを連れてこっそりと宿屋へと戻った。そして開口一番ルークの言葉がこれだった。それに驚いたのが宿屋に来るなり抱き着かれたが先程の仕返しとばかりにレジウィーダの頬を両手で引っ張るヒースだった。



「何だ、あいつもいるのか」

「ええ、六神将の皆様方と一緒に来ていたわよ。それで何故かわからないけど、彼だけこの街に残っているの」



ヒースの問いに頷いたタリスが簡単に説明する。それに今度はルークが頭を掻いた。



「だーから、それでどうすんだよ! つーか、俺達が隠れてたのバレたんじゃねぇか!?」

「どうでしょう……」



と、イオンが難しい顔をしながら答えた。



「もしも見つかっていたのなら、仲間に知らせていたのではないでしょうか」

「まぁ、どちらにしても極力外に出るのは控えた方が良いでしょう。一応、彼を除いた神託の盾はこの街から退いたようですが……油断は出来ません」



本来なら、直ぐにでもここを発ちたいのだろう。しかしイオンの体調を考えるならば、無理は出来ない。それにジェイドの言う通り、外に出たからと言って油断も出来ないのだ。

それにティアとタリスも頷いた。


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