A requiem to give to you
- 城砦都市(5/13) -


そう言って元気良く挨拶をすると、レジウィーダは思い出したように声を上げて老マクガヴァンを向いた。



「あ、マクガヴァンのじっちゃん!」

「どうしたんじゃ?」

「あたし、明日で出ますね」



漸くその時が来たみたいなので、と苦笑するレジウィーダにマクガヴァンは寂しそうにその眉を下げた。



「そうか……それは寂しくなるの」



じゃが、それも仕方ないかね。そう言ってマクガヴァンも同じ様に笑う。グレンはそれに頷きながらレジウィーダに右手を差し出した。



「またいつでも遊びに来てくれ。我らはお前を歓迎する」



それにレジウィーダはありがとう、そして「お世話になりました」とお礼を言ってその手を握った。それからルーク達を振り返った。



「それじゃ、一先ず外に出よっか………タリス♪」

「!」



タリスが口を開く前に彼女の手を引くと来た時と同じ様に勢い良く基地を後にしたのだった。



「って、おい待てよ!」

「待って下さい!!」

「あ、おい二人とも急に走るなって」



ハッとしたルークとイオンも急いで二人を追い掛け、それにガイも続いた。



「………………」

「ジェイド坊や、どうかしたのかね?」



黙り込んだまま皆の出て行った扉を見つめるジェイドを不思議に思ったマクガヴァンが問う。それにジェイドは首を横に振った。



「いえ、何でもありませんよ。何でも」

「………そうか。じゃがあまり思い詰めるなよ」



マクガヴァンの言葉には答えず、彼は二人に軽く頭を下げるとそのまま基地を出て行った。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「……んでもって改めましてーで、あたしはレジウィーダって言います。元、神託の盾騎士団やってましたー」



一先ずマルクト軍基地を後にしたレジウィーダは改めて己の素性を明かす為に皆に名乗った。ルーク達は彼女の口から出た"神託の盾"と言う言葉に警戒するも、その前に付いていた"元"と言う単語にホッと息を吐く。

そしてルークは直ぐに「ん?」となった。



「あ、待てよ。神託の盾のレジウィーダ………?」

「ルーク、何か知ってるのか?」



ガイがそう問い掛けるのも気付かずにルークは考え込んだ。



「神託の盾……ヴァン師匠…………ああっ!!」

「うわっ、ルーク静かにっ」



思い出したっ、と突然大声を上げたルークの口をガイは慌てて塞ぐ。あまり騒ぎ過ぎると街の入り口にいる神託の盾に見つかってしまうからだ。暫しルークは暴れたが、ガイからの説明を受け渋々大人しくなる。



「……それで、ルークは一体何を思い出したんだよ」



ガイがルークの口から手を離しながら問い掛けると、ルークはズボンのポケットからいつしかタリスから貰った携帯電話を取り出した。



「こいつ、前にこの携帯って奴に電話かけてきたんだよ」

「「え!?」」



ルークの言葉にタリスとガイは驚愕を露わにした。



「そんな筈は……だって、」



だってこの世界には電波などないのだから、と言う言葉は辛うじて呑み込みレジウィーダを見た。



「やーっと思い出したんだ。ちょいと時間掛かりすぎじゃないかいルー君?」



どうやら本当に彼女はルークに電話をしたらしい。しかしどうやって……と、疑問に思うタリスを余所にルークは「ルー君言うな!」と憤慨していた。



「そもそも、声しかわからない上に一年以上も連絡が来なけりゃ忘れもするわっ」

「えーだってそれは仕方ないよ。ダアトとバチカルじゃあ距離ありすぎるし。まぁ、いずれ行こうとは思っていたんだけど……それよりも先にやりたい事もあったからさー」



まぁ、でも結果的に会えたんだし、良いんじゃない?



「いいえ、ちっっっっっっとも良くないわ」



そう言って話に割り込んできたタリスはニコニコと笑いながらレジウィーダの頬を両手で摘んだ。


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