A requiem to give to you- 城砦都市(3/13) -
と、言うよりどうやってここまで来たんだ、と言うガイにジェイドも頷いた。
「そうですね。先程お話を聞きましたが、貴方はタリスやガイと同じルークの使用人らしいですね。ガイがルーク達を探しに行った時にはまだバチカルにいたそうですが……どうやってガイよりも先にこの場所に辿り着けたのですか?」
それにヒースはよくはわからない、と首を振った。
「フィーナさんにルーク達を助けに行きたいと言ったらよくわからない場所に飛ばされて、そこにいた奴に更にここまで飛ばされた」
「飛ばされた、ねぇ」
タリスはどことなく納得したような顔をし、意味のわからず仕舞いなルークが「わかるのか」と訊ねた。
「以前貴方が私をエンゲーブに置き去りにした事があったでしょう? あの時に似たような事がねぇ……」
「置き去りとか人聞きの悪い事言うなっつーの! 大体、あの時お前寝てただけじゃねぇか!!」
「ただ寝ていた訳じゃないわ。無理矢理引きずり込まれたのよ」
「誰にだよ」
「怪しい人」
確かに間違ってはいない、とヒースは思うと同時にルークの言葉の意味を考えた。彼はタリスに「寝ていた」と言った。確か"あの空間"にいた存在が言うには、あの場所は本来ならば意識……魂があれば躰はいらない場所だった筈。つまりはタリスは奴に意識だけを引っ張られた事になる。
(意識だけ必要とする空間………)
奴は自分をこの街に飛ばす少し前に己を"夢想を奏でる者"と言っていた。意識、夢想………ならばあの場所は、夢の中?
(いやいや、それじゃ自然のエネルギーがどうのと言う話の説明がつかない)
結局の所、今の段階ではまだまだ情報が少なすぎるのだ。これ以上はいくら考えた所で答えは出ないだろう。
(クソッ、ややこしい言い回ししやがって)
「あの………」
内心舌打ちをしていると、不意に誰かに声を掛けられた。ヒースは思考するのをやめてそちらを見れば、いつか襲撃者がいた……と、言うよりも今現在、何故か宿屋の一室には彼女とヒースの二人しか残っていなかった。
「君は確か……ティアだっけ」
「ええ……その、バチカルではあなたにも迷惑を掛けてしまったみたいね」
ごめんなさい、と謝りながら拘束を解いていくティアにヒースは「僕は気にしてないから別に良いよ」と首を振ると辺りを見渡した。
「ところで、皆は?」
「あなたがいくら話しかけても気付かないくらいに考え込んでいたから、先に軍の基地に行ってくると言って出ていったわ」
軍の基地。そう言えば彼らの中には何故かは聞きそびれてしまったがマルクトの軍人がいたのを思い出した。恐らくその関係だろう。
(ならついでにレジウィーダも連れて帰ってくるだろうな)
いつの間にか姿を消していた共犯者は恐らく軍の基地にいる事だろう。そして運命の再会(?)を喜びながらこの部屋に戻って来るのを想像するとドッと疲れが襲ってきたのだった。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
一方、ヒースをティアに任せて軍の基地に来たルーク達は、初っ端から基地にいたご老人こと老マクガヴァン氏の「ジェイド坊や」発言に度肝を抜かれたり、何故かマクガヴァン将軍がいなかったり、アニスからの報告と言う名のルークへのラブレターで目が滑りそうになったりと、様々なアクシデントに見舞われていた。
「ははは、ルーク。ナタリア姫が泣くぞ〜?」
「うるせっ! とにかく、用はもう済んだろ!?」
さっさと戻ろうぜ、と言ってからかうガイを押し退けて部屋を後にしようとした……が、しかしそれは突然の来訪者によって妨げられたのだった。
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