A requiem to give to you
- スウィーツとヒーロー(8/9) -



「……何がおかしい」

「いや、可笑しくはないさ。ただ……お前さんからそう言う言葉を聞けるだなんて新鮮だ、と思ってな。どこかのアホにも聞かせてやりたいぜ」



まぁ、それは良いとして。



「実はお前がここに来る少し前に、さっきの預言の話をマルクトに消えたとされるお前のお仲間にもしていた」

「え!?」

「あっちの場合はオレの方から無理矢理ここに引き刷り込んだからな。滅茶苦茶怒ってたな」



と、言いながらもトゥナロは笑っていた。今度会ったら地獄の底に埋められるんじゃないだろうかと思わずにはいられない。だかそれと同時にヒースは安堵していた。話の様子からするに、彼女は無事らしい。恐らく、彼女と共にいるルークも。それにタリスがあの話を聞いたのなら、恐らく自分と同じ事を思っていると筈だ。物凄く不本意だが、今の彼女は……そう言う人だから。



「さて、お前の望みだが」



不意にそう言われてトゥナロを見ると、彼はどこから出したのか杖を持っていた。



「叶えてやる。……次に"夢"から醒めた時、そこにいた者と共に時を待て。そして、」
















お前達の望む未来を………



「僕達の望む未来? それに夢って……」

「それじゃ、飛ばすぜ」



再びヒースの言葉を遮ると、トゥナロは杖を構えてヒースに向けた。すると陣が現れ、そこから出た光がヒースを包み込んだ。



「お、おい待てよ! まだ話は終わってない! それにお前の事も……」



結局わかってない。その言葉にトゥナロは最初のような意地の悪い笑みを浮かべて言った。



「オレは"夢想を奏でる者"。そしてローレライの使者。……それ以上の事が知りたければ、オレが"何"であるかがわかれば自ずと答えは出る」



今【真実】を知り、過去【夢】をも知り得るお前なら……わかるさ、いずれな。



「それじゃ、今度は現(うつつ)で会おう………」



それまで死ぬなよ、聖。



──
───
────






「へー……それで次に気が付いたらあたしに抱えられてた、と」

「まぁ、そう言う事だな」



はぁ、とヒースは大きな溜め息を吐いた。レジウィーダとヒースは街の喫茶店に来ていた。珍しく怒り心頭だったヒースを落ち着かせる為に彼の好きな甘い物をと思ったレジウィーダが連れてきたのだった。そして今、彼女らのテーブルにはこの街限定のパフェの入っていたグラスがいくつも並んでいる。

レジウィーダは最早何杯目となるかわからないパフェをつつきながら唸った。



「うーん、それにしても今【真実】を知り過去【夢】をも知るってどう言う事なんだ?」

「さあね、それは僕にもわからないよ」



あれだけアバウトじゃ尚更、とレジウィーダに勝らず劣らずな数のパフェを口に含みながらヒースはそう答えた。



(……だけど、ここに飛ばされる瞬間に彼奴は確かに僕の本名を口にした。奴がアレじゃないとしても、何かしら関係があるのは間違いないんだろうな。それに、)



レジウィーダからの話を聞く限りでは、彼女も彼の事についてはまるでわからないらしい。ただ……



(彼奴は宙の記憶が一部欠落しているのを知っている。しかもそれが封印されているだって?)



自分は"あの時"に何があったのかは知らない。ここにはいないタリスも、だ。けれど自分達四人の関係が変わったのは全てあの時からだ。"あの時"の……―――



















"宙"のある一言で全てが変わってしまったんだ……────。


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