A requiem to give to you
- スウィーツとヒーロー(6/9) -



「まぁ、普通は無理だがな。そう言う力がないと」

「……何か、考えてる事が筒抜けってのも気分が悪いもんだな」

「違いねェ」



ククッと奴は笑う。それが何だか気に食わない……。



「ここにいれば嘘も筒抜けだからな。……………いや、例外もあるか」

「例外?」

「嘘を本当と信じて疑わない奴の吐く嘘を見破るのは難しいんだよ。ここでさえな」



と、意味深な事を吐かれたが、ヒースには訳がわからなかった。それよりも彼には知りたい事があり、それを口にした。



「別にそれはどうでも良いけど、僕の躯ってのはどこにあるんだ?」

「さあ?」



即答だった。そんなのオレが知る訳ないだろう、と。まぁ、当然と言えば当然の事だろう。



「だが、」



トゥナロはヒースに近付くと彼の心臓の辺りを指さして言った。



「お前なら喚べるだろう? その力で」

「何……?」



力、とはいつしかタリスが命名していた"突然変異術"の事だろうか。しかしながら突然変異、と言うのは何か違うのではないかと常々思う。だが、その突然変異術……ヒースの持つ特殊な力は自然の力と同調する力だ。幽体離脱(とは少し違うが)した脱け殻を呼び寄せる力ではない。



「なら、この場所は全ての自然エネルギーがぶつかり合い、その摩擦で変化した力で出来ていて、且つお前がソレと同調している状態であると考えたならどうだ?」

「?」

「そもそもお前のその力は、言い換えればお前自身の身体をそのエネルギーの一部として作り替える力でもある」



だからこの場のエネルギーと同調しているのだとすれば、元に戻れば良いだけの話だ。それを聞いたヒースは漸く合点がいった。



「成る程な、それで"呼び寄せる"じゃなくて"喚ぶ"な訳か」



そうとわかれば早速元に戻る為に意識を集中させた。すると、ヒースの周りが一瞬だけ光を纏い、次の瞬間には透ける事もなく元の状態に戻っていた。



「はあ、漸く戻った……」

「それじゃ、一段落したところで話は戻るが、」



と、トゥナロは本来の話題を切り出した。



「お前は何をしにここまで来た?」



あの女に何か頼まれでもしたか、と問うて来たがヒースは首を横に振った。



「僕がおま……貴方に頼みがあって来た」

「頼み、とは?」



一応頼み込む身だからと言葉を改めたヒースの違和感に一瞬だけ片眉を上げるも、気にしない事にしたトゥナロが更に訊いてきた。ヒースは一度目を瞑り、次に開いた時には決意に満ちた表情で言葉を紡いだ。



「僕を、仲間の所に………大切な、友達のいる場所に連れて行って欲しい」



お願いします、とヒースは勢い良く頭を下げる。そんな彼をトゥナロは何かを考えるようにして見つめ、それから問い掛けた。



「何の為に?」



その言葉にヒースは顔を上げて言った。



「僕は仲間達に今までずっと守られるばかりだった。仲間だけじゃない。今、お世話になっている人達にも」



二年と言う長い時間、住む場所を与えてくれた公爵夫妻とルーク。外へと出してもらえないのも、タリス達を探しに行くのを止められたのも危ないからと……結局は守られる形となってしまっていた。それに一年前にルークを庇って誘拐された時にタリスと共に助けに来てくれたガイとヴァン謡将。そして仲間を探す為に裏で協力してくれたナタリア。ここまで来る切欠をくれたフィーナにも、沢山の助けをもらったりもした。



「僕はその人達の為にも持てる力を使いたい。友達が困っていれば助けたいし、守りたい」

「…………」

「昨日、友達が突然光と共に消えてしまった。右も左もわからない所で困ってるかも知れないし、もしかしたら今こうしている間も危機に瀕しているかも知れない」


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