A requiem to give to you
- スウィーツとヒーロー(4/9) -



「わっ………ちょ、離せっ!!」

「うわっ!? わ、わかったから取り敢えず落ち着こ!?」



一先ず相手を落ち着かせ、ゆっくりと近くの段差に降ろす。これで漸く安心したとばかりに溜め息を吐き、相手は疲れたようにレジウィーダを見上げた。



「まったく……本当に君は相変わらずだな」



その言葉にレジウィーダはニッと笑った。



「そっちもね


















聖ちゃん」



それに驚いたのは成り行きを見守っていたアニスだった。



「ほえ? この人ってレジウィーダの知り合いなの?」

「うん。幼馴染みなんだ!」



そう嬉しそうにアニスに紹介するレジウィーダに聖……ヒースは立ち上がり、改めて名乗った。



「ヒース・アクレイズだ」

「神託の盾騎士団導師守護役、アニス・タトリン奏長でーす♪」



と、握手を交わす二人を余所にレジウィーダは「ん?」となった。



「ヒース……?」

「ん? ああ、偽名だよ」

「いや、それはわかってるんだけど……」



それは自分もだし、と返すレジウィーダに思わぬ所で思わぬ真実を知ってしまったアニスの「偽名かよっ」と言うツッコミを耳に入れつつ、彼の名前の意味について考えた。



「いやその"ヒース"って名前……意味は確か……"光を救う者"だったよね?」

「それは知らないけど、そんな意味があったんだね」






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『"光を救う者"?』

『ああ、アレが言うにはソイツがあの"焔"を助けるのには重要となるらしい』

『ふーん…………で、ソレって誰なんだ?』

『……いずれわかるさ』



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─―─
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「………あー……あの人言ってたのって、君の事だったんだ」



以前このセントビナーに来たばかりの頃に某ローレライの使者から言われた言葉を思い出したレジウィーダは妙に納得したように呟いた。



「あの人って?」

「"夢想を奏でる者"とか言う人」



ガシッ



「……えーと、ヒースさん?」



何をなさってるんでしょう、と突然いつもならば有り得ないような爽やかな笑みを浮かべながらレジウィーダの肩に手を置いた(と、言うより力強く掴んでいる)ヒースに問い掛ける。



「ちょっと、そこでお話ししようか。レジウィーダ?」



そう言うが早く、ヒースは彼女が何かを返す前にさっさと腕を引いて街の中心部へと消えていった。



「……やっぱり、レジウィーダの友達だわ」



と、一人残されたアニスの言葉だけが虚しく囁かれた。

そして話はルーク達がマルクトに飛ばされた数日後に遡る。






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―──
─―



夜のバチカル。人気も少なく静まり返った街を物凄い早さで駆けていく影が二つあった。



「ちょ、フィーナさん! 一体どこへ行こうとしてるんですか!?」



ヒースは自分の手を取り突然走り出したフィーナにそう問うと、彼女は「あの人の所です」とだけ返した。



「だからあの人って……」



誰ですか……?



「"あの人"はわたしの古い知り合いで、元同僚です」



彼女にとっての元同僚、と言う事はあの世界的宗教団体関係者の事か。そんな事を思っていると、フィーナは更に続けた。



「あの人なら、彼なら………貴方の望みを叶えられるでしょう」

「? どう言うこ……」



全て言い切る前に、ヒースは不意に浮遊感を感じ、残りの言葉を呑み込んだ。



「…………………え?」



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