A requiem to give to you- 戦場の再会(9/10) -
あまりにもあっさりとした答えに全員が拍子抜けした。
「な、何でそんなに軽いんだよお前は」
「だって………そう言う縁なんだもの」
縁?、と聞き返すルークにタリスは優しく笑って頷いた。
「一度結んだ縁と言うのはね、ちょっとした事では切れない物なのよ」
だから、
「どんな形であれ、その人の事を知り、覚えている限り縁は続くの。例えそれが敵対していようとも、ね。それに今は寧ろ居場所がわかって嬉しいくらいだわ」
「? 何でだよ」
「だって、居場所さえわかっているのならいつでも迎えに行けるじゃない」
「なら逆に貴方が彼に連れて行かれそうになった場合は、どうするのですか?」
ここで今まで黙って二人の会話を聞いていたジェイドが口を挟んだ。タリスはその問いに対してクスリと笑うと、次いでその笑みを悪戯っ子のそれに変えた。
「その時は、逆にこちらへと引き込んでしまえば良いのよ」
そう簡単に上手く行くモノなのだろうか、と言った本人を覗く全員にそんな一抹の不安が過ぎったが、ジェイドは諦めたように肩を竦めると口元を弛めた。
「それを聞いて安心しました」
「何よ、私が敵対するとでも思ったの?」
「可能性としては有りだとも思えたのでね」
クイッと眼鏡のブリッジを押し上げて言う彼に「やぁねぇ」と返した。
「私がルーク達を置いてそんな事はしないわよ」
「え……」
と、驚くルークにタリスは振り向いた。
「私はね、決めたのよ。私は……貴方を守ると。何があっても、絶対にね」
「っ、タリス………俺は!!」
悲痛に表情を歪めたルークが何かを言おうとしたその時、突然ジェイドが槍を出して後ろを振り返った。
「どうやらお話の時間は終わりのようですよ」
その言葉に全員の間に一気に緊張が走る。
「見つけたぞ!」
「導師イオンを渡せ!」
銀の甲冑を身につけた神託の盾の兵士が数名武器を手に現れた。
「神託の盾……!」
「やれやれ、もう追い付いて来たのか」
「一気に片付けますよ!」
ジェイドのその掛け声と同時に彼はティア、ガイと共に神託の盾兵に向かい走っていった。それにルークは戸惑ったように辺りを見渡した。
「お、俺は……」
「ルーク、貴方はイオン様と一緒に私の後ろにいて!」
「ばっ、そんな事出来るわけ……って言うか、お前戦えるのかよ!?」
その言葉にタリスはイオンに布に包んだライガの卵を預けると、先程タルタロスの武器庫から持ってきていた弓を構え、矢を引いた。
「実戦経験はないわ。でも、決めたから」
一年前とは訳が違う。今度は……全力で!!
「行けっ!!」
ヒュッとタリスの手から矢が放たれる。それはこちらに向かってくる敵の武器を弾いた。そこに空かさず詠唱をし、術を放った。
「鋭き水の刃よ……アクアエッジ!!」
「ぐああっ!!」
水の刃は甲冑をもすり抜け、敵の身体を裂いた。相手はそのまま絶叫を上げて息絶えた。
「………………」
初めて人の命を奪った。その感覚に譜術を放った先の指が震える。それを隠すようにタリスはギュッとその手を握り締めると、ティア達の援護の為の矢を放った。
「ティア!」
ティアに振り上げられていた武器を弾き落とす。そこに出来た隙にティアは太股のホルダーからナイフを抜くと、甲冑の僅かな隙間に目掛けて思い切り突き刺した。
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