A requiem to give to you
- 戦場の再会(6/10) -



「それで……貴方達は何をしているの?」



ここから先には通路がない。あるとすれば、堅く閉ざされた扉のみだ。そう思い問い掛けると、窓から外を伺うジェイドが答えた。



「タルタロスの緊急停止機能が作動している間は、この扉以外は開かないようになっています。現在イオン様は敵に連れられているようですが、もう直戻って来るそうです」

「だからここで待ち伏せて奇襲をかける、と言う事ね」



その通りです、と頷くや直ぐに表情を引き締めると皆を振り返った。



「どうやら帰ってきたようです。……ルーク」

「へっ、任せとけって」



ジェイドの呼び掛けにルークは鼻を鳴らして笑うと、ミュウの頭をひっ掴んで扉のギリギリの所に立った。それと同時に外から聞き覚えのある女性の声と、階段を登るような音が聞こえてきた。そして扉が開かれ……───



「火ィ、噴けェェェッ!!」

「ファイヤー!!」



眼前に現れた神託の盾兵に向かいミュウを突き出し、ルークはその小さな頭を思いっ切り殴った。するとまるでそれがスイッチが入ったかのようにミュウの口からは勢い良く炎が吐き出された。



「ぐ、うわぁっ!?」



甲冑により大火傷は免れたものの、驚きに足を踏み外した兵士は階段を頭から転げ落ちていった。それに外にいた女性、リグレットがルークに譜業銃を向けようとしたが、それよりも早くジェイドが彼女の首元に槍を突き付けたのだった。



「流石は死霊使い。封印術を受けてなおそれだけ動けるとは」

「お褒めに預かり光栄です。さあ、武器を捨てなさい」



ジェイドの言葉にリグレットは苦々しげに顔を顰めると両手の譜業銃を地面に落とした。それを見た外の兵士達も次々と武器を捨てる。全員の手から武器がなくなったのを確認すると、ジェイドはティアに指示を出した。



「ティア、第一譜歌【ナイトメア】を!」



それにリグレットがピクリと反応を見せた。



「ティア……? ティア・グランツか!?」



驚いたように上げられた声にティアもよく知るその存在に気付き、目を見張った。



「リグレット教官!? どうして貴女がこ……」

「ティア、後ろ!!」



突然酷く焦ったようなタリスの声が上がり、ティアは反射的に横に逸れ階段から飛び降りた。すると今まで彼女がいた場所に雷撃が落とされた。その一連にジェイドの気がリグレットから逸れたのを彼女は見逃さず、素早くジェイドを弾き飛ばすと譜業銃を拾いルーク達に向けた。また他の神託の盾兵も武器を構え彼らを囲んだのだった。



「形成逆転、です」



その声はタルタロスから聞こえてきた。全員がそちらを見ると、タルタロスからライガが現れた。その上には声の主であろう桜色の髪を持つ幼い少女と、グレイがいた。



「よう、タリス。また会ったなァ?」



グレイはタリスの姿を見つけるとライガから降り、普段滅っっっ多に見せない爽やかな笑顔でそう言った……が、その顔に青筋が浮かんでいる辺り、かなり怒っているのは誰が見ても明らかだろう。

そんな彼にタリスはいつものように笑った。



「あら、もう復活したの。早いわねぇ」

「これでも鍛えてるンだよ。その辺の柔な奴らと一緒にすンじゃねェ」

「それは……困ったわねぇ」

「オレが強すぎて?」

「ホホ、永遠に凍りついてれば良かったのに」



と、親しいのだが何だかよくわからない会話にルーク達は間に入れずに、呆然と二人を交互に見ていた。しかしリグレットだけは何となく事情を察したのか、盛大な溜め息を吐くとアリエッタを向いた。


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