A requiem to give to you
- 戦場の再会(5/10) -



「そう思うなら助けてくンない?」



その言葉にアッシュは鼻で笑った。



「ハッ、自業自得だろう。一度ならず二度までも女に逃げられてよぉ」

「ヤな言い方すンじゃねーよ。つーか、見てやがったのか。趣味ワリィな」



そう言うと、珍しかったからなとふざけてるのか真面目なのか些かわからない回答が返ってきた。



「それにしても、だ。さっきの女、あのレプリカの所にいるんだとな」

「あぁ、そうだな」



アッシュの言葉に頷いてみせると、彼は途端に複雑そうな顔になった。先程の話を聞いていたのなら、憎んでいる己のレプリカを守ろうとするのがグレイの知り合いだと言う事に内心困惑しているのだろう。



「それでお前はどうする」



複雑の表情のまま、アッシュは問い掛けてきた。



「前にも言ったが、いつまでもここに縛られていなくても良いんだぞ。……まぁ、もしも向こう側に行くのなら、俺達は敵同士となるがな」

「ならオレも前と同じ様に返してやるよ」



オレは今更グダグダと旅立ったりはしない。それが探し人の所在がわかったのならば、尚更だ。



「だって面倒だしな。それに場所がわかってりゃ、いつでも迎えに行ける」

「何故、そう言い切れる?」



何故お前は……そうまでしてそいつを信じようと思えるんだ?

その問いはどこか自分に言い聞かせているようにも感じたが、グレイは特に追求せずにフッと笑った。



「そりゃあアレだ。縁だからだよ」

「縁?」

「そう……一度結んだ縁は、ちょっとやそっとじゃ切れやしないンだよ」



よっぽどの事がなければな。そう言い切ったグレイの表情を見たアッシュは何も言えなくなってしまった。



「……何て顔してやがんだ、屑が」



チッ、と一つ舌打つとアッシュは鞘から剣を抜き思いっ切り振り下ろし、彼に纏う氷を砕いた。グレイは自由になった身体を確かめるように動かしながらも、アッシュの台詞に首を傾げた。



「何て顔って、どんな顔だってンだよ?」

「……気付いてなかったのか?」



さっきの、何かを切望するかのような……あの表情に。その言葉を飲み込み、アッシュは「何でもねぇよ」と溜め息混じりに吐くと歩き出した。



「どこ行くンだよ」

「私用だ。少し外れる」

「あ、ならオレも行こうかな」



と、すっかりいつもの調子に戻ったグレイがそう言えば、アッシュはキッと眉を吊り上げた。



「ダメに決まってるだろ! てめぇはタルタロスの復旧でも手伝ってろ」

「あ? 誰に指図してンだテメェ」

「六神将補佐【部下】にだが?」



文句あんのかコラと言いたげに返すアッシュに、流石に正論だと思ったグレイは「へーへーわかりましたよー」と渋々と引き下がったのだった。



「仕方ねーな。結局アリエッタも来ねーしよ………一丁救出にでも行きますかね」



そう言うとグレイは腰のホルスターから譜業銃を取り出し、恐らく閉じ込められて出られなくなってるであろう少女の元へと向かった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「ルーク!」



暫く艦内を進み続けていたタリスは漸く目的の朱色頭を見つけた。一方、突然自分の名を呼ばれタリスを向いたルークは驚きに目を見開かせると同時に、安堵の様子を見せていた。



「タリス! 無事だったのか!? ……つか、何か荷物一杯だな」

「えぇ、あの爆発で船室に穴が開いたから、神託の盾が来る前に脱出したのよ。荷物については……気にしないでね♪」



簡単に事の経緯を説明するとティアも「そうだったのね」と頷き、彼女の手にある物らを気にしつつもタリスとの再会を喜んだ。


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