A requiem to give to you
- 戦艦タルタロス(6/7) -



「ルーク!!」

「ご主人様!!」



ティアとルークと共に来る事になったチーグルの子供が彼に駆け寄ろうとする。それにラルゴの後ろにいたグレイが譜業銃を撃ち牽制した。



「はいはいちょいと、ストップしてもらおうか」

「下手に動けばこの小僧の首がなくなるぞ」

「貴方達は……!?」



くっ、ティアはナイフを構えて二人と対峙する。逆に冷静に二人を見据えていたジェイドは眼鏡のブリッジを指で上げながら口を開いた。



「六神将【黒獅子ラルゴ】に六神将の補佐、ですか」



その言葉にグレイが自分の事も知っているのに内心驚いていると、前にいるラルゴはククッと笑った。



「死霊使いジェイド。戦乱の度に骸を漁ると言うお前の噂はよく聞いているぞ」

「死霊使いジェイド……貴方が!?」



と、ラルゴの言葉に驚愕を露わにするティアにジェイドは肩を竦めた。



「これはこれは……私も有名になったものですね〜。まぁ、貴方程ではありませんがね」

「どうだかな。……本当ならば貴殿とは一度手合わせを願いたい所だが、事情が事情なのでな。導師を渡してもらおうか」

「それは出来ない相談ですね。それ以前に、貴方達二人だけで私に勝てるとでも?」



明らかな挑発だったが、ラルゴは乗らずにグレイに一瞥を寄越した。



「お前の譜術を封じれば、な」



それにジェイドが訝し気な表情になった瞬間、グレイは手に持っていた箱を投げ付けた。



「油断大敵だぜ、大佐殿!」

「なっ……これは!?」



箱はジェイドの真上で開き、光が放たれた。それを諸に浴びたジェイドは苦しげに膝を着く。



「大佐!」

「……これは封印術【アンチフォンスロット】!?」



アニスがジェイドに駆け寄り、ティアが信じられないと言う声を上げた。



「本当なら導師に使いたい所だったんだが、お前の譜術は侮れんからな」

「……くっ、ミュウ! 天井の譜石に火を吐きなさい!!」



ジェイドは素早く足元にいたミュウに指示を出すと、ミュウは頷き高く飛び上がって天井にぶら下がる譜石に向けて火を噴いた。それにより灯り用にと使っていた第六音素の譜石は第五音素と反応し、強い光を放った。



「何!?」

「チッ……ッ」



ラルゴとグレイが眩しさに目を覆い、その隙にジェイドはアニスに指示を飛ばす。



「アニスはイオン様の所に!」

「はい!」

「行かせるか!!」



ラルゴはルークの首元にあった鎌を離しアニスに振り上げた。しかし……












「させませんよ」













ドスッ、と鈍い音がした。グレイの目には背中から刃を生やしたラルゴと、長い柄を彼に突き立てるジェイドの姿が映った。



「さ…………刺し、た」



恐怖に染まったルークの呟きが聞こえたのは、恐らくグレイとジェイドの二人だけだっただろう。ジェイドはラルゴに刺さった槍を引き抜く。支えを失った巨体は音を立てて倒れ、グレイはそれを静かに見つめていた。



「譜術士が譜術だけを使うとは、限りません」



油断大敵ですよ、と嫌味ったらしく笑いながら槍に着く血を払うこの男は、正しく死霊使いと呼ぶに相応しかった。



「さあ、次は貴方ですよ。六神将補佐の……グレイ殿?」



と、ジェイドは槍を構え、その後ろではティアが杖を握りナイフに手を掛けていた。



(あらら……ホントにやられちまったよ)



どうするかなぁ、とこの状況下においてグレイは呑気に考えていた。


.
/
<< Back
- ナノ -