A requiem to give to you
- 戦艦タルタロス(5/7) -



「お、あれが戦艦タルタロスだな」



漸く見え始めた目的地を双眼鏡で見ていたグレイが呟いた。それを聞いてたラルゴはいつでも出動出来るよう愛用の鎌を手に頷いた。



「そうだ。グレイ、我々が先行し奇襲をかけるぞ」

「OK。因みに奴らには?」



それにはリグレットが答えた。



「既に奴らは我らに気付いている筈だ。相手の気を逸らす為にもグレイとラルゴが正面から派手に動いてもらい、その間に私達が艦橋【ブリッジ】を占領する」

『了解(です)』



リグレットの言葉に全員が頷くと、ラルゴとグレイはリグレット、フィリアム、アリエッタ、アッシュが乗っている以外のグリフィンと地上を駆けるライガの群を引き連れ、タルタロスへ向かって行った。



「艦壁に穴を開け、そこから侵入する───……グレイ」

「はいよ」



ラルゴに呼ばれグレイは頷くと予め用意していたバズーカを担ぎ、思いっきり放った。



「特製の超火力音素弾、喰らいやがれ!!」




ドォォォォォンッ




直後、凄まじい爆発が起き艦壁に大穴を空けた。それと同時に戦艦の動きも止まったのだった。



「突撃だ!!」



高々に発せられたラルゴの声に兵士と魔物達は一斉に戦艦へと雪崩込んでいく。それに乗じてラルゴとグレイもグリフィンから飛び降りて艦内へと入った。



「グレイ」



ラルゴは慎重に艦内を進みながらグレイに言った。



「これは先程リグレットから聞いたのだが、どうやらアッシュのレプリカがここに居るらしい」



それにヘェ、とだけ返した時、人の声が聞こえ二人は近くの壁に隠れた。



「一体何が起きてるってんだよ!」

「おかしいわ……グリフィンがこんな行動を起こすだなんて」

「一先ず、何が起きているのかを確かめなければなりません」

「イオン様……無事だと良いんですけど」



扉が開かれた、そこから出てきたのは今し方ラルゴの言っていたアッシュのレプリカ達だった。



「噂をすれば影ってか。……にしてもあのレプリカ、あんまり似てねーな」



ケラケラと笑いながら言うとラルゴに頭を叩かれた。



「余計な事を言うな。あの人の命令では、あのレプリカは殺してはならんらしい。だから捕らえるか、もしくは暫し動けぬようにするぞ」

「けど、あの眼鏡の奴……死霊使い【ネクロマンサー】だったか? アレいるけど、大丈夫かよ」



死霊使いジェイド。マルクト皇帝の懐刀として名高い彼は一流の譜術使いとしても有名で、またそれは彼の右に出る者はいないとされている。グレイはともかく、ラルゴはそれ程譜術に対する耐性は強くない。あの譜術でラルゴがやられたとなれば、接近戦向きではないグレイだけで彼らを抑えるのは無理だ。

その意を込めてラルゴに問えば、彼は仕方あるまいと溜め息を吐くとグレイを見て口を開いた。



「俺達の目的は艦橋占領の為の時間稼ぎと指揮官の足止め。導師もいないならば奴に"アレ"を使え」

「わかった」



グレイが頷き、コートの裏ポケットから小さな箱を取り出すのを確認すると、ラルゴは鎌を持ち直しその巨体には似合わない素早い動きで彼らに近付いた。



「クソッ、冗談じゃぬぇ! こんな所にいたら死んじまう!!」



俺は降りるからな、と言って駆け出すのをティアが慌てて静止の声を上げる。



「待ってルーク! 今行くのは危険だわ!!」

「その通りだ!」



ルークの走り出した先にいたラルゴは姿を現し、鎌を振りルークを壁に縫いつけた。


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