A requiem to give to you
- 戦艦タルタロス(3/7) -



「あら、いけなかったかしら?」

「いけねぇっつーかよ……普通、持ってくるか?」



つーか、あの中からよく見つけられたな。

呆れ半分なルークに他の者達も一様に頷いた。



「とにかく、それを処分出来ないようであれば、貴女を自由には出来ません」

「構わないわ」

「タリス!」



どうしてだよっ、と悲痛な声を上げるルークにタリスは至って普通に答えた。



「だって、約束なんですもの」



それだけ言うとタリスは控えの兵士に連れられ、部屋を後にしたのだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







ガラス玉ひとつ落とされた
追い掛けてもひとつ落っこちた
ひとつ分の日溜まりに
一つだけ、残ってる

心臓が始まった時
嫌でも人は場所を取る
奪われないように



「守り続けてる……」



花の街と謳われるセントビナーで、一人の少女が唄っていた。彼女の周りには街の子供達が集まり、その歌を聴いていたが、ふと止まった歌声に首を傾げた。



「レジウィーダちゃん、どうしたの?」



子供の一人がそう訊ねる。しかし当の本人は空を見上げたまま動かなかった。それを不思議に思った子供達もそれに倣い首を上げると、白い何かが飛んでくるのに気が付いた。



「あ、あれって!」

「ヒコーキ!」

「ちがうよ、あれは紙ヒコーキって言うんだよ!」



わっ、と子供達は嬉しそうに紙飛行機を追い掛け、捕まえようとした。しかし段々と降下してきた紙飛行機は、やがてレジウィーダの手の上にスッと止まったのだった。



「…………?」



まじまじとそれを見つめていると、何やら文字が書いてある事に気付き、紙飛行機を開く。



「……ぶっ、これは……酷いな」

「なになにー?」

「レジウィーダちゃん、なにがかいてあるのー?」



書いてある内容を見て噴き出したレジウィーダに子供達が見せてと集まる。レジウィーダは一頻り笑うと静かに紙を折り、「内緒♪」と言うと紙をポケットに突っ込んだ。



「さあ、お歌の続き……聴かせて上げるね!」



そう言うと、子供達は紙の事など気にならなくなり、皆元気良く返事を返したのだった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







タリスが連れて来られた場所は兵士の休憩室の空き部屋だった。簡素なベッドと、机と椅子。作りは先程の部屋と差して大差はない。てっきり牢にでも入れられると思っていたタリスは最初は拍子抜けしていたが、直ぐ開き直ると卵をベッドの上に置いて寛ぎ始めた。

それから部屋の扉が叩かれたのは割と直ぐの事だった。



「おや……随分とご寛ぎ頂けているようで」



返事をする前に部屋に入って来たのは例の如く(?)ジェイドだった。入ってくる早々嫌味とも取れるその言葉にタリスはニッコリと笑った。



「部屋の外は駄目でも、中であれば自由にして良いのでしょう? だから好きにしてるんです」

「これはこれは、図太い方でいらっしゃる」



ははは、とジェイドも笑い、それにタリスもホホホと返す。部屋は笑い声に満ちていた……がどことなく薄ら寒かった。

しかしふと、ジェイドは笑いを止めて近くにあった椅子に座った。



「さて、そろそろお話をしたいのですが」

「どうぞ」



タリスも笑うのを止めるとベッド上にきちんと座り直すと、彼の言葉を促した。



「実は、貴女に幾つかお聞きしたい事がありましてね」

「あら、何かしらねぇ」



キムラスカ王族の事とか、国の弱点みたいな事は教えられないわよ。

先にそう釘打つと、ジェイドはそうではありませんと首を振った。


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