A requiem to give to you- 鏡合わせの濡れ紅(4/7) -
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「おやタリス、どこへ行ってたんですか?」
城から出て一番に声をかけてきたのはジェイドだった。他にもガイとティアもいる。
「ちょっとナタリアと話してたのよ」
一応嘘ではない。本当とも言い切れないが。そんな事を思っていると、ルークとヴァンも城から出てきた。
「兄さん……」
「話は聞いた。出発はいつだ?」
ヴァンが妹に尋ねるとジェイドが提案があると言って話し始めた。どうやら海には神託の盾の船が監視していて危険らしい。ジェイドの予想だと大詠師の妨害工作かもしれないのだとか。そこで囮の船を出港させて、タリス達は陸路でケセドニアへと向かう事になった。
それからヴァンが自ら囮の船に乗ると言ってルークが駄々をこねたりしたが、彼の一言で渋々ながらも首を縦に振り、彼と別れてさぁ行こうとした時、ジェイドが待ったをかけた。
「そう言えばヒースはどうしたんです? 確か同行するのではありませんでしたか?」
「それが昨日大佐さん達と邸を後にしたっきり姿を見ていないのよ」
ルーク達は見てない?と問うとルークとガイは揃って首を横に振った。それを見てジェイドの表情が険しくなった。
「見ていないと言えば……レジウィーダの姿も今日は見ていません」
レジウィーダはジェイドと共にグランコクマへ行くと言っていた。ジェイドがアクゼリュスの救援に行くのならば、当然彼女もついていくものだと思っていた。
しかしジェイドでさえもその彼女の所在について把握していないのだと言う。
「また何か事件に巻き込まれてしまったんじゃ……」
ティアの不安そうなその言葉に一同に不安が過った時、ふとガイは口を開いた。
「電話してみたらどうだ?」
少なくともレジウィーダの場所はわかるのでは、と言うとルークはそうかと言って早速かけようとした……が、
「どうやってかけるんだ?」
そう、ルークには日本語が読めないのだ。例え読めたとしても本名で登録してあるからどの道わからないだろうけど。
そもそも過去に電話をした時も、いつも彼女の方から掛かってきていたのでこちらから掛けたことすらない。
そんなルークの言葉にタリスは納得したように彼から電話を一度預かり、電話帳を開いて「日谷 宙」と書かれた名前を選んだ。
「はい、これでかかるはずよ」
そう言ってルークに電話を渡すと、コールが鳴り始めたそれをルークは耳に当てた。
「……あ、レジウィーダか?」
どうやらちゃんと繋がったらしい。
「お前今どこに……─────って、はぁ!?」
「ど、どうしたの?」
素っ頓狂な声を上げたルークにティアが訊くと、
「今、ヒースと一緒にタルタロスにいるって……」
と言った。
『……………………』
「つまり……彼女達は六神将に捕まってる、と言う事ですか」
ジェイドが眼鏡を押し上げながら言う。それと同時に遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ルーク様ぁ〜、大佐〜!」
声の主はアニスだった。こちらに駆け寄ってくるその様子はどこか焦っていた。
「どうしたんだ?」
「それが……朝起きたらイオン様がいなくなってたんです!」
「何だって!?」
「ルーク、レジウィーダにイオン様がそちらにいるか訊いてみて下さい」
全員が驚く中、ジェイドは一人冷静にルークに言った。ルークは直ぐに彼女に訊く。そして皆を振り向いて首を横に振った。
「一緒にはいないみたいだぜ。これから漆黒の翼とか言うのが連れて来るらしいけど」
「漆黒の翼って確か……私達がマルクトで散々間違われてた連中の事よね?」
「神託の盾に雇われてイオンを誘拐したんだろうな」
「まぁ何にしても、追いかけるしかないでしょう」
しかしアニスは首を振った。
「駄目だよ〜。街に出て直ぐにシンクとフィリアムがいて邪魔をするんだもん」
「フィリアム?」
「フィリアム・グラネス。グレイの義弟だよ。ついでにレジウィーダの義弟でもあるよ」
タリスは「そう……」と一瞬訝し気な顔をするも、今追及するべき事じゃないと割り切って話の流れを続けた。
「でも六神将がいたら、私達が陸路を行く事が知られてしまうわねぇ」
「ほえ? ルーク様達は船でアクゼリュスへ行くんじゃなかったんですか?」
「いや、そっちは囮だ。……とにかく何とかしないと」
そう言ってルークは唇を噛んだ。
「それならあたしも連れて行って下さい!」
「どうする、ジェイド?」
ルークはジェイドを窺うと、彼は溜め息混じりに承諾した。
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「うーん……」
「どうした?」
「どうにも電波が悪くて…」
いつの間にか切れちゃった、と携帯をヒースに見せると、彼はそれを受け取って調べ始めた。
「……壊れてる」
「あ、マジ? 直せる?」
「道具はあっても部品がない」
何で道具はあるんだ、普通ならツッコミが入るが、彼がそう言った類の道具を常に常備している事はレジウィーダは既に知っていた為、誰も突っ込む人はいなかった。
その時部屋のドアが勢い良く開いた。
「レジウィーダ!」
「あれ? クリフじゃん、久し振り♪」
パタパタと手を振るレジウィーダにクリフは「聞いてよ!」と怒りながら詰め寄った。
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