A requiem to give to you
- 黒銀と白金(5/8) -


「見ーつけた☆」



タリス達が公爵夫人に会っている頃、廃工場でレジウィーダの嬉しそうな声が響いた。

しかし何故こんな所にいるのかと言うと、屋敷を後にしジェイド達と共に宿屋へと向かっていた時の事。普通の人ならまず気付かない程の微量の第七音素を感じたのだった。

来た時にはなかったその音素は静かに近寄ってきて、レジウィーダに巻き付いた途端に消えた。



(もしかして………)

『? 今のは…………』



流石にジェイドも第七音素の存在に気が付いたようだ。しかし幸いにもどこにあったかまではわからなかったらしい。

試しに彼の名前を呼んでみると、深く追求する気はないらしく、『何でもありませんよ』と首を振ったのだった。



『そっか。じゃあさ、あたしちょっと行きたい所が出来たからちょっと行ってくるよ!』

『これからですか?』

『うん。終わったらまた戻ってくるから♪』



そう言うとジェイドの返答を待たずに人混みの中へと紛れ、そのまま第七音素が現れた方へと向かったのだった。

そして現在に至り、廃工場にて第六音素に満ちた弓を手にしていた。

これは本来の目的の一つでもある。









白銀の世界の閉ざされた場所にいた、彼の存在との約束を果たす為の。

世界中を駆け巡って探し、漸く見つけたそれにレジウィーダは気の抜けたような笑みを浮かべた。



「思ったより早く見つかって良かったよー」



それにいつの間にか近くに来ていた第七音素の発信源もとい、トゥナロも頷いた。



「あぁ。それで何個目だ?」

「えーっと、三つ目だね」



レジウィーダはコンタミネーションで第一音素に 満ちた杖と槍を取り出して確認した。



「一番最初にトゥナロさんが持ってた魔杖ケイオスハート、セントビナーでグレンさんから貰った 魔槍ブラッドペイン、そしてこの聖弓ケルトアトール……。あと半分かー」



しかし一年探してこれだけ見つかった事を喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか……そこは何とも言えない微妙な気持ちだったのは内緒にしておこう。



「良いんじゃねーか? その調子で見付けていけば」

「うーん、でももう少しペースを上げた方が良さげかも。これから色々と忙しくなりそうだし」



それもそうだけどな、とトゥナロも頷く。



「だがオレは殆んど何もやってやれないぜ。預言を覆すにしても、お前の記憶を探すにしても、ロニール雪山にいるアレとの約束を果たすにしても、だ」

「うん、わかってるよ。でもこうして預言の事とかあたし達に教えてくれたり、触媒を見つけてくれるだけでも大助かりだよ」



ありがとう、と微笑みながらお礼を述べるとトゥナロはフンと鼻を鳴らして杖を取り出した。



「……まぁ、良い。とにかくオレはもう行くからな」

「そっか………………」

「どうした?」



いつもと違うレジウィーダの様子に杖を取り出したトゥナロが問い掛ける。



「ん、別に何もないけど…………ねぇ、あたしこれからグランコクマに行くんだけどさ、トゥナロさんは一緒に来ない?」



それにトゥナロはピクリと眉を上げた。



「何故?」

「いや、何て言うか………さ、今回の旅で皆と再会出来たけど、またバラけちゃったし…………やっぱちょっと寂しいんだよね! だから良かったら一緒にいけないかなーとか思って?」



あはは、と苦笑混じりに本当の事を言えば、トゥナロは一瞬動きを止めたが、直ぐに首を横に振った。



「悪いが、オレは忙しいんでな。一緒には行けない」

「どっか行くのか?」

「ダアトに、な。そろそろコンタクトを取って起きたい奴がいる」

「じゃあ、仕方がないか」

「………………」



そんなレジウィーダの言葉にトゥナロは無言でいたが、やがてその空気に耐えられなくなり頭を掻いて溜め息を吐いた。



「〜〜〜〜〜〜〜あのなぁ、何だよそのらしくなさは。調子狂うだろうが!」

「うわっ!?」



トゥナロは勢いよくレジウィーダの頭をかき混ぜるようにして撫でた。いきなりの事で驚いたが、レジウィーダはそれが嫌ではなかった。



「聖なる焔の預言!」



不意に言われたその言葉にレジウィーダは顔を上げる。



「アレが近い内に起こる筈だ」

「!」

「聖なる焔が動くなら、あいつらもついてくるんだろ?」



あいつら、とはタリスとヒースの事だろう。確かにルークなら、あの二人とガイは鉱山の町に連れて行きそうだし、本人達も何がなんでも着いていくだろう。

そう思って頷けば、トゥナロは漸くレジウィーダの頭から手を外した。



「なら、寂しくはないんじゃねーの?」

「どういう事だ?」

「お前がこのまま死霊使いに着いていくなら、どうせ直ぐに会う事になるって事だよ。後はテメェで考えな」



そこまで言うとトゥナロは持っていた杖を横にし、足下に譜陣を描いてそのまま消えていった。



「ジェイドに着いていけば直ぐに会える……?」



和平の親書をキムラスカ王に渡した。後は結果を聞いて帰るだけ……………ではないのだろうか。



「もしかして、この和平にはまだ何かあるのか……?」



そう、例えばそれこそルークも向かうであろう、鉱山の町に行く用事とか?



「あれ? そもそもルークが鉱山の町に行く為の理由が必要となるなら、この期に行くのが実は一番都合が良いんじゃ………











っ!?」



突然、背後から殺気を感じた。反射的にサッとその場から退くと、今までいた場所には薙刀が振り下ろされていた。



(この薙刀は……!)

「こんな近くに来るまで気配に気付かないなんて、姉貴も平和ボケしたか?」



薙刀を肩に担いでそう言った人物を見てレジウィーダは目を見開いてその人物の名前を呟いた。



「…………フィリアム!?」


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