A requiem to give to you
- 置き去りの時間(7/11) -


「成る程。だから今は明確な答えは出来ない、と言うわけですか」

「まぁ、そんなとこ。いずれは思い出す予定だけどね」

「出来るんですか?」

「うん、出来るよ」



確かな自信を持って言えば、ジェイドはどこか複雑そうな顔をした。



「その自信は何処から来るんでしょうねぇ」

「だって、約束したんだ」



そう、約束。この世界に来てから出会った人達とした約束と、今はまだ思い出せないけれど、確かにしていた小さな約束。



「あたしはね、約束は果たす為にするものだと思ってる。だから絶対に諦めないし、叶えてあげたいんだ。それにきっと、」



果たす事で、見えてくるモノもあるだろう。それが自分にとってプラスになるかはわからない。もしかしたら、悪い事が起こるかも知れない。でも、それでもレジウィーダの中に揺るぎはなかった。



「きっと、君は"彼女"に色々と言いたい事があるんだろうね。でもそれは、君が確かな自信を持って"彼女"が帰ってきたと思った時に言ってあげて」



だから、それまで…………待っててくれるかな。

それもまた、一つの約束。レジウィーダはジェイドを真っ直ぐと見詰めて問いかけると、彼は暫く考え込むようにしていた顔を上げて小さく息を吐いて頷いた。



「良いでしょう。一先ずこの件に関しては保留と言う事にします。先程の貴女の言葉で、色々と考えを纏める必要も出てきましたから」

「事務的やねー」



苦笑しながら言えば、ジェイドは肩を竦めながら「こう言う性格なものですので」と返した。



「あ、所でレジウィーダ」

「うん?」

「先程、貴女は帰る為の"鍵"も探していると言っていましたね」



そう言えば、言った気がすると頷けば、彼は突然レジウィーダの左手を取って長い袖を捲った。



「うおっ、急に何……?」

「この石」



そう言って彼が示してきたのは、レジウィーダの左手の甲に填められた緋色の守り石だった。



「貴女が寝ている間に少しだけ見させてもらいましたが、これは響律符ではありませんね?」

「あ、うん。でも機能的には似たような物だと思って良いよ」

「敢えてこれが何かは訊きませんが、私は以前にもこれと酷似した物を見た事があります」



そう言って左手を優しく下ろしてから離した彼の言葉にレジウィーダは目を見開いて体を勢いよく起こした。



「それホントか!?」

「ええ。そして今それはこちらで保管しております」



更なる情報にレジウィーダの表情はパッと明るくなる。



「欲しいですか?」




ニッコリと微笑みながらの言葉に何やら裏を感じたが、帰る為の手掛かりには変わりない。それに今までの話の流れからして、十中八九レジウィーダの求めるあの"鍵"である事は間違いないだろう。ならば答えは一つだけだった。



「モチコース!」

「そうですか。……………では、






















おめでとうございます。貴女は今、バチカル・アクゼリュス経由、グランコクマ行きチケットゲットしましたv」



これからも宜しくお願いしますね♪

先行き不安はいつもの事。しかしこれが茨の道でも、地獄の道でも、約束を果たす為である。



「こちらこそ!」



乗り掛かった船とはこの事か。もう少しこの旅を楽しむのも良いだろう、とレジウィーダは心の中は静かに思った。






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