A requiem to give to you
- 置き去りの時間(6/11) -



「どうやら、これ以上は平行線ですね………」

「あははー……」



どうやら彼も同じ事を思っていたらしい。いや、そもそも話しやすいようにしたにも関わらず話を脱線させたのはこちらなのだから何も言い返せない。



「それではレジウィーダ」

「うん?」

「長い前置きとなりましたが、私は貴女に問わねばならない事があります」



本当に長かったね、なんて話の腰を折りそうになるも何とか堪えて次を待つ。



「単刀直入に聞きます。貴女は一体何者ですか?」

「本当に見も蓋もないくらいにザックリ聞いてきたねー」

「その反応、とてもデジャヴを感じますよ」



つまりは以前にも誰かに同じ問いをしたのか。



「以前タリスにも全く同じ質問をして同じように返されました」

「えーと、これこそデジャヴなんだけどさ。あたし、声に出てた?」



へーそうなんだー、と思いつつも疑問を口にすればやはり彼はカイツールの時と同じく「いいえ」と言って首を横に振っただけだった。



「…………………」


「それより、質問に答えてはくれませんか?」



彼にしては珍しく急かすように促してくる様に、レジウィーダはもう少し遊びたい気持ちを抑えて仕方なしにと小さく息を吐いた。



「そうだねー……何者か、と言われたら正直な話、神託の盾の兵職持ちの一般人ですとしか答えられないけど………」



でもそれは既に彼も知っているし、何よりも彼の求める答えではないだろう。



(何だってあたしの周りの男ってのはこう言う所で面倒臭いのが多いんだろ)

「難しい質問だよね。何者か、か。あたしの場合ってさ、その質問だと複数回答があるんだよ。でも、きっとそのどれもが君が知りたい答えには繋がらないと思う」



だから、



「君の知りたい答えについて、今はハッキリとは答えられないけど、ヒントをあげる」



要するに彼の今知りたい事と言うのは、レジウィーダ自身と宙の関連性だろう。彼の中で=となっていない以上、レジウィーダからもハッキリとはそれを伝える事は出来ない。何故なら……



「"あたし"とジェイド・カーティスが初めて会ったのはセントビナーだよ」



レジウィーダに彼と会った時の記憶がないからだ。確かに会った事はあるのだろう。しかし記憶がない以上、その時の話をされても何も答えられないし、レジウィーダ自身も曖昧なまま聞きたくはない。

だから今、レジウィーダがする事は、ジェイドが正しい答えに辿り着けられるように情報を示す事だった。



「それは……」

「『貴女がレプリカと言う事ですか』って? 違うね。あたしは間違いなく被験者《オリジナル》だよ。それでもって…………今は、ちょっと迷子なんだ」

「迷子?」



ジェイドが単語を繰り返しながら問うと、レジウィーダは一つ頷いて苦笑した。



「うん、迷子。今は君達と一緒に旅してるけど、本来のあたしの目的は和平でも、神託の盾の仕事でもない。あたしはね、この世界のどこかに落としてしまった"自分の一部"と、帰る為の"鍵"を探しているの」

「自分の一部、ですか………それは一体」

「記憶って奴だよ。ガイと同じ感じだね。部分的に記憶がないんだよ。最近になって漸く何の、どこら辺の記憶がないのかがわかってきた程度なんだけどね。それでわかった事なんだけど、この欠けた記憶は一部の対象を限定としている物で、またそれに関係する記憶も根こそぎ吹っ飛んでいるっぽいんだよ」



そこまで答えたところで、漸くジェイドは納得したようだった。

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