A requiem to give to you
- 進展を齎す風(1/6) -



「あいつ………っ!!」



ガタン、と座っていた椅子から勢い良く立ち上がったレジウィーダは、食べ掛けのオムライスをそのままに風の如く食堂を飛び出した。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







ところ変わって教会の図書室。絵本から参考書まで多くの種類の本が棚に綺麗に並んでいたり、またはテーブルの上に山積みになっていたりしている。時々それが崩れたりして本に着いた埃が宙を舞うが、それも図書室特有の光景だ。

そんな中、髪をウルフカットにした少年、グレイは参考書らしき物を片手に詰まらなさそうに欠伸をした。



「ふぁ……………あー、つまんね」



そう呟いたかと思えば、フォニック言語で書かれた『サザンクロスの音素学書』を後ろに放り投げた。投げた本が山積みにされた本に当たり、バサバサと音を立てて崩れた。その音を聞いた、丁度向かい側で黙々と本を読んでいたフィリアムは、驚く事もなく視線を上げて事態の張本人を見た。



「また、崩れた……ぞ」



ポツリと聞こえるか聞こえないかの大きさで言った彼の言葉に、グレイはどうでも良さげにヒラヒラと手を揺らした。



「あー、別に良いって。どうせここの管理者が後で直すだろうしよ」



そう言って既に何度本山を崩したのだろうか。グレイの後ろでは数々の本が散らばっており、とても一人で直すには可哀想な事になっていた。しかしグレイはそんな事は気にも留めず、次の本を手に取り適当なページを開いてはまた投げた。



「ンっとにつまんねェ。マジでつまんねェ。ガチでつまんねーって。……お前、よく飽きねーなァ」



だらしなくテーブルに突っ伏したグレイは顔だけ上げて、もう5、6冊は読破しただろうフィリアムを見て言った。



「……面白いし」

「ふーん」



そう答えると、グレイはフィリアムの読み終えた本を一冊取って開いて見てみた。



「………………」



何となしにパラパラとページを捲りながらさらっとその本を見ていたが、やはり詰まらなかったのか、途中でバタンと音を立てて閉じた。



「やっぱつまんねェ」



溜め息混じりに今度は扉に向かって本を投げ飛ばすと、丁度扉が物凄い勢いで開いた。






バタンッ










ガッ







「ぎっ!?」



扉から飛び込むように入ってきたレジウィーダの顔面にそれは当たり、悲鳴とも言い難い声を上げてひっくり返った。



「あ、ワリィ。いたの気付かなかったわ」

「……アンタ、絶対態とだろ」



フィリアムの突っ込みに、彼は明後日の方向を向いて口笛を吹いた。一方、ひっくり返ったレジウィーダは顔を押さえながらゆっくりと起き上がると、一気にグレイに詰め寄り彼の胸倉を掴んだ。



「いきなり………















何すんじゃわりゃぁああぁあぁっ!!」



すぅ、と大きく息を吸ったかと思いきや、鼓膜が張り裂けそうな怒声を上げた。そうなる事が予測できたグレイとフィリアムは耳を塞ぐ事が出来たが、他の図書室利用者達は全くの予想外の事に鼓膜に大ダメージを受けたのだった。


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