A requiem to give to you
- 緑の少年たち(4/8) -



「それではまず、お前逹の実力がどの程度か見せてもらう」



凛とした声でそう言ったのはリグレット奏手。彼女自身、今の皆から教官と呼ばれるようになってまだ一年弱と短い。だが、その洗礼された銃捌きと譜術、的確な指示や頭の回転の良さ等の生まれ持ったカリスマ性が彼女を第四師団の師団長へと導いた。

そんな彼女は今、ヴァン・グランツ謡将の副官を務めつつ新人兵士への指導を行っていた。



「うわはー、緊張するわー……」



レジウィーダがそう言うのも無理はなかった。今日は新規入団者だけを集めて行う配属試験と言う名の実力テスト。訓練用の安全な物とは言え、初めて手にする武器を使った訓練なのだ。チラリと横にいるグレイを見ると、やはり彼も些か表情が固いように思えた。



「そう言えばアンタ、武器は?」



ふと、彼が何も武器らしい物を持っていない事に気付き訊いてみた。するとグレイは一言「ある」と言って既に始まっている試合に目を向けた。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







次々と勝者と敗者が決まっていく。この結果が来月末に行われる人事移動及び配属に関わってくる為、少しでも待遇の良い場所へ行こうと皆必死なのだ。



「次、レジウィーダ・コルフェート!!」



遂にレジウィーダの番が来た。名を呼ばれ、元気良く返事をして前へ出る。



「正直、地位とか配属とかどうでも良いけど……やるからには本気でやってやろーじゃん!!」



よしっ、と先程武器庫から持ってきた杖を握り締め構える。グレイは何故彼女が使った事もないような武器を選んだのかと謎だったが、どうせいつもの好奇心だろうと思い何も言わないでいた。

ルールは『己の持つ全ての術技法を駆使して挑め』との事。つまりは武器の数や形、術技の制限はないと言う事らしい。そんな事をして命の危険はないのだろうか、とも思ったがそれは予め配布された制御リング(今回の試験の参加証明書でもある為、装備は必須らしい)によって問題は解消された。だから余程の事がない限りは大丈夫だろう。



「始め!!」



開始の声が上がると共に両者は同時に駆け出した。

戦争を知らない時代のレジウィーダと少なからずも士官学校なりで訓練を受けてきた相手。実践歴・戦闘力ならば確実に相手の方が上だろう。本来ならば自分逹も軍に入るのならばそう言った学校へ行かなければならないのだが、入団手続きを済ました時にあの栗毛侍(※ヴァン)が免除したのだった。それを言った時のレジウィーダは当然ながらかなりの不信感を抱いていたようだが、正直あまり時間をかけていられない自分達にとってそれは大変ありがたい事だった。



(早いとこ自由に動けるようになンねーと、探し物も何もねーからな)



それを目の前の女がわかっているのかは定かではないが、とにかく自分達には一から真っ当に物事を進めている時間はない。














只でさえ、誰かに呼ばれてこの世界に来ているのだから……。



「うわっ……と、危なー」



そんなレジウィーダの声に彼女を見る。相手の振り下ろして来た剣を寸前に杖で受け止め、直ぐ様間合いを取る。すかさず相手が駆け出すのを目に止めると高く跳び上がった。そして、



「刺す!!」



正しく針の如く鋭い蹴りを繰り出した。落下のスピードも加わり、威力を増した蹴りは受け止めた相手の剣を弾いた。そして今だとばかりに追撃に入るレジウィーダに相手は一旦彼女から離れて術を放った。



「タービュランス!!」

「おっと」



レジウィーダは目の前に現れた烈風をバックステップで避けが、一部避けきれず大気の刃を受けた。詠唱を破棄した術だった為にそこまで威力はなかったが深目に切ったらしく、頬に負った傷からは真っ赤な血が流れた。



「……ヤロー…っ」



いつの間にか剣を拾い、こちらに向かってくる相手を睨み付け、服の袖で頬を拭う。まだ新調したばかりの新しい物だったが、構わずレジウィーダは杖を強く握った。


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