A requiem to give to you
- 緑の少年たち(3/8) -



「うん、やっぱりシンクだ!」

「……は? って、アンタまさか本当はわかってなくて適当に抱き着いてきたわけ?」



訝しむような言葉にレジウィーダは首を横に振った。



「そう言うわけじゃないよ。でも何かさ、改めてわかると嬉しいじゃん!」

「わけわかんないんだけど……」

「安心しろ。こいつの心理を読める方がスゲェ」



げんなりとするシンクにグレイは憐れみの視線を送りつつそう言った。しかしシンクはそんな彼に更に訝しんだ。



「アンタは……?」

「ンだよ、覚えてねーのか? オレはグレイだ。今度はしっかりと覚えとけよな」



やれやれ、と言った感じでそう言うグレイにシンクはどうでも良さげに「気が向いたらね」と返した。



「このガキ……っ」



それにグレイが拳を握り締めて震わせていたが、二人は流した。



「それよりも、武器が決まったんならさっさとしてよね。只でさえ時間がないって言うのに、これ以上リグレットを待たせるとボクまでとばっちりを受けるんだからさ」



そう言ってシンクは仮面を着け直して武器庫から出ていった。



「なんか、ここ数日で随分とひねくれたモンだな」

「反抗期なんじゃない?」



開きっぱなしの入口を見つつ呟いた言葉にそう返され、「そう言うモンじゃねーだろ」とグレイは頭が痛くなった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







そこには鬼がいた。……否、正確には鬼のような形相をした女性だったが、彼女の整った顔立ちが更にその恐ろしさを増長させているように見える。

そろそろと二人が彼女の前に行くと、切れ長の目を思いっきり細めて口を開いた。



「貴様ら………武器を選ぶのに一体全体どれ程の時間をかけている!!」



彼女の怒声は修練場全体へと響き渡り、その場にいた者達の動きを止めた。そんな中、レジウィーダはあまりの怖さにヒクヒクと頬を引き吊らせながら必死で言い繕った。


「あー……えーっとデスネー……色々とやってたら、一時間ぐらい経っちゃいマシター」

「テメェのせいでな」



横からグレイがまるで他人事のように言った。それにレジウィーダはムッとして反論した。



「何でだよ!?」

「何でも何もテメェが人の上に武器をひっくり返したからだろうが! トドメまで刺そうとするしよ。あン時ゃマジで焦ったぜ」

「それは避けないアンタが悪いんだろ! 軍に入るってンなら、突然の襲撃への対応くらいしっかりしておけば!?」

「あ゙あ゙!? テメェ自分の事を棚に上げて言うこたァそれか!? まずは謝りやがれっ!!」

「はぁ!? いつあたしが自分の事を棚に上げたよ! て言うか、あくまでもあたしはアンタの為にわ・ざ・わ・ざ抜き打ち訓練をしてあげたんだ!」



寧ろ感謝して欲しいくらいだね!と胸を張って言うレジウィーダ。正直、そんな事を頼んでいなければやって欲しいとも思っていない。完璧にレジウィーダの有り難迷惑(よりタチが悪い!)なのだが、彼女はあくまでも認めようとはしなかった。



「テメェ……いい加減にしねェと………」



その先を言おうとした矢先、彼らの直ぐ側で銃声が上がった。それと同時に目の前を閃光が走り抜けるのが見えた。



「「………………」」



レジウィーダとグレイは言い争いをやめ、ギギギ……と音がしそうな動きで振り向く。そこにはこちらに二丁銃を向ける女性がこれ以上にないくらいにニッコリと笑っていた。



「貴様ら……そろそろ黄泉を渡りに逝くか?」

「「ゴ、ゴメンナサイ……」」



流石に命の危険を感じた二人は素直に謝った。そして一連流れを見ていたシンクはそれは深い溜め息を吐いていたのはここだけの話。


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